【新まち食堂物語】寿亭・石川町 心まで満たす伝統の味

11/10 10:44

  • 動画付き
「伝統の味を守り、お客さんをおなかいっぱいにしたい」と話す悟さん、亜由美さん夫妻(石井裕貴撮影)
ワインベースの生姜焼き丼としょうゆラーメンの「ラーメンセット」、部活帰りの高校生にも人気のモツみそ炒め定食

 石川町の沢井地区にある「寿亭」は60年以上にわたり地域で愛されてきた食堂だ。3代目店主の深谷悟さん(42)、亜由美さん(41)夫妻が中心で営んでおり、夫妻は「お客さんをおなかいっぱいにしたい」と語る。

 店は1959年ごろ、悟さんの祖父の故貞夫さんが現在と同じ場所で始めた。当初は鍋焼きうどんやラーメンが主力で、店のすぐ北側にあった旧沢田小に日頃から出前を届けていたという。東京都内でフランス料理を修業してホテルやゴルフ場の料理長も務めた悟さんの父孝さん(74)、母典子さん(71)の代には試行錯誤して今なお続く名物メニューを多く生み出した。

 退職し継ぐ決意

 2016年ごろ、孝さんが体調を崩して典子さんと亜由美さんが2人で店を切り盛りするようになった。悟さんも勤務していた町外の工場を退職して店を手伝った。生まれ育った店で働くうち、悟さんは「自分が後を継ぐ」と決意を固めた。孝さんの体調が元に戻った頃にその思いを打ち明けると、19年から店主として本格的に調理を担い始めた。

 「続いてきた伝統の味を守る」を信念に掲げる悟さん。看板メニューの生姜(しょうが)焼きは珍しいワインベースでこくが深く、フレンチの要素を取り入れた孝さんのレシピ通りに作っている。ラーメンセットのしょうゆラーメンはしっかりした味付けの丼との食べ合わせを考え、昔ながらのさっぱりした味で提供している。

 店には日頃、近隣住民や地元の消防団員らがよく通っている。石川町と白河市を結ぶ県道11号に面しており、県道を行き交う町外の人も立ち寄る。悟さんは「最近は地元の人だけでなく、郡山や福島ナンバーの人も訪れる。多くの人に支えられて今がある」と感謝する。

 昨年には旧沢田小跡地に学法石川高サッカーフィールドが完成し、同校サッカー部の練習拠点となった。すると、練習や試合帰りの部員たちが店にやってきて食事するのが恒例となった。店の前が部員の自転車でいっぱいになり、店内約30席が部員で埋まることも珍しくない。

 活躍願い大盛り

 「運動を頑張る食べ盛りの子どもたちにたくさん食べさせたい」という夫妻の思いから、部員らに限っては大盛りを無料で提供している。悟さんは「選手がおいしそうに食べている姿を見るのが好き。定食とラーメンを一緒に頼んでぺろりと平らげる子もいて驚かされる」と話す。

 同フィールドで試合や大会がある時は、悟さんがピッチに足を運んで選手のプレーを見守る。「高円宮杯JFA U―18サッカーリーグ2024福島」(通称Fリーグ)で同校が1部(F1)優勝を飾った10月の最終節も見届けた。「通ってくれる選手の活躍が目に入るたび『あの子が頑張っている』とうれしくなる」と笑顔を見せる。

 同部は今年も全国高校サッカー選手権県大会決勝に勝ち進むなど、めきめきと力をつける。「子どもたちの活躍が自分たちの元気になる」。夫妻はこれからもアスリートの健康を守り、心まで満たせるような食事を提供する。(秋山敬祐)

お店データ

■住所 石川町沢井字上ノ原96の13

■電話 0247・26・0657

■営業時間 午前11時~午後2時

■定休日 火曜日

■主なメニュー
 ▽ラーメンセット(カツ丼、生姜焼き丼、肉丼、チャーハンから1品選択)=1000円
 ▽生姜焼き定食=1000円
 ▽モツみそ炒め定食=900円
 ▽ごまラーメン=900円
 ▽梅塩ラーメン=900円

 名物激辛ラーメン

 自家栽培した激辛唐辛子のブートジョロキアやハバネロを使った「えんまラーメン」(1200円)が名物だ。激辛唐辛子のペーストを投入したみそベースの麺で、悟さんが激辛好きの友人の助言で開発した。悟さんは「すごく辛いので自己責任で楽しんで」と呼びかける。

 NHKラジオ第1「ふくどん!」で毎週木曜に連携企画

 新まち食堂物語は福島民友新聞社とNHK福島放送局の連携企画です。NHKラジオ第1で毎週木曜日に放送される『ふくどん!』(休止の場合あり)のコーナー「どんどんめし」で紹介される予定です。

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