【11】家族の笑顔作る会社に 河京社長・佐藤富次郎

03/27 08:30

家族愛を大切にする私(中央)と社員たち。これからも社員とその家族、大切な人を思いやれる商品や人づくりを心掛けたい

 社員は宝だ。当たり前だが、社員のやる気を引き出すのが私の役割。その実現のため2017(平成29)年、社員の行動指針「Kバリュー」を作った。指針の作成は、過去に私が考えた「経営十訓」に続き2度目。指針の刷新は、現場での苦い経験がきっかけだった。

 ある日、店舗のミーティングに参加、内容を聞いていると「あれ?」と思った。社員たちは経営十訓を基に仕事しているものと思い込んでいたが、そうではなかった。それを理解していたのは経営陣だけで、現場の各店舗や直営店は独自の理念で動いていたのだ。

 どうすれば指針が現場まで浸透するのか―。悩んでいた時、米国のオンライン靴店・ザッポスの経営手法を紹介する「ザッポスの奇跡」という本に出会った。読むうちに、社員の価値観、信条、物差しを大切にする経営の必要性にはっとさせられた。

 そこで、ザッポスの指針「コアバリュー」にならい河京流のKバリューを考えることにした。骨組みとなる8項目の言葉は1週間で出来上がったが、それを説明する文章の作成は現場のスタッフに任せた。かみ砕いて理解するには、スタッフ自身で考えてもらう必要があると思ったからだ。

 Kバリューの1番目の言葉は「家族愛を高めよう」。最初から決めていた。社員とその家族が幸せなことが最も大切だからだ。

 「家族」にはもう一つの意味がある。商品を買った家族の笑顔を作りたい。食卓で喜多方ラーメンをすすりながら家族の大切さを感じてもらう。家族の絆の橋渡しならぬ”麺”渡しするのもわれわれの役割だろう。

 1986年の創立以来、ようやく会社の方向性が見えてきた。そこで私は昨年、「あと3年でリタイアする」と社員に伝えた。これからは地元に貢献し、通販を軸として喜多方ラーメンの食文化を守る。日本三大ラーメンの一角を崩さずに、新しい時代に何ができるのか。社長でいる間に突き詰め、社長引退後は間もなく13歳になる愛犬リンにもっと愛情を注ぎ込みたい。ーおわり

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