郡山市の飲食店「しゃぶしゃぶ温野菜郡山新さくら通り店」で2020年7月に発生し、32人が死傷した爆発事故で、福島地検が業務上過失致死傷罪でガス設備の点検業者1人を在宅起訴する方針を固めたことが25日、複数の関係者への取材で分かった。地検は今年1月、当時の店の運営会社社長ら4人を嫌疑不十分で不起訴処分としたが、福島検察審査会の「不起訴不当」の議決を受けて再捜査しており、判断を一転させた形だ。26日にも処分を決定するとみられ、他の3人は改めて不起訴とする見通し。
複数の関係者によると、福島地検はガス設備の点検業者1人について「過失が認定できる」と判断したという。今後、法廷で刑事責任が問われる見込み。一方、運営会社社長とガス管の設置業者2人については、1度目の不起訴処分と同様に「過失の認定が困難」と判断したとみられる。
爆発事故では31人が重軽傷を負い、改装工事業者の男性1人が死亡した。事故後に経済産業省がまとめた調査報告書では、調理場のシンク下のコンクリートの床面に設置されていたガス管が腐食し、亀裂部分からガスが漏えいしたと指摘していた。
事故を巡っては、郡山署が21年9月、業務上過失致死傷の疑いで運営会社社長とガス管の設置業者2人、ガス設備の点検業者1人、死亡した改装業の男性など計5人を書類送検した。
福島地検は「過失を認定することが困難だった」などとして昨年3月、書類送検された5人を不起訴処分とした。事故で重傷を負った郡山市の女性(50)は昨年4月、処分を不服として死亡した改装業の男性を除く4人について福島検察審査会に審査を申し立てた。「不起訴不当」とした同審査会の議決書では、ガス設備の点検業者については、腐食したガス管の点検状況などを「追加捜査すべき」と言及。再現実験などで同業他社の点検方法、手順と比較することも求めていた。
民事訴訟では、地裁郡山支部に提訴した17件の争点整理手続きが続いており、原告と被告の間で責任の所在を争点とし、主張が交わされている。