• X
  • facebook
  • line

【12月18日付社説】補正予算成立/歳出膨張に歯止めが必要だ

2024/12/18 08:05

 緊急性に欠ける支出が多く、膨張した予算だ。国債頼みで将来世代にツケを負わせながら政権を安定させているのと変わらない。

 経済対策の財源の裏付けとなる2024年度補正予算がきのう、成立した。一般会計の歳出(支出)総額は前年度を約7千万円上回る約13兆9千億円で、歳入(収入)全体の約半分は政府の借金の国債が占める。住民税が非課税の低所得世帯に配る3万円の給付金、能登半島の復興経費などが盛り込まれた。ガソリン補助金の再延長の支出なども計上された。

 政府は今回の予算について、国の経済力強化が狙いと説明している。しかし、脱炭素の潮流に逆行するとの指摘のあるガソリン補助金の延長などが、それにつながるのかは疑問だ。

 新型コロナウイルス感染症や物価高への対応として近年の補正予算が大規模なものとなっていた。これを踏まえ、政府は経済財政運営の指針「骨太方針」で「歳出構造を平時に戻す」としていたが、コロナ禍前の補正予算規模である約3兆円を大きく上回った。「平時に戻す」からは程遠い。

 賃上げ環境の整備や投資立国などの実現を掲げ、さまざまな産業分野の振興策が盛り込まれた。しかし、これらはいずれも数年来の課題であり、きのうきょう突然出てきたテーマではない。本来であれば、当初予算案で手当てすべき性質のものだ。

 緊急性を重視するため審議期間の短い補正予算で、国債を発行してまでさまざまな事業を盛り込んだのは、ばらまきとのそしりを免れまい。政府与党は財政再建を目指す方針との整合性が問われる。

 不安定な与党の足元を見るかのような野党の姿勢にも問題がある。積極的な財政出動を主張する国民民主党は、「年収の壁」の見直しなどを条件に予算案に賛成した。日本維新の会も、教育無償化の実務者協議開始を申し合わせたのを理由に賛成に回った。

 衆院選の結果により自公の強硬な姿勢が影を潜め、与野党間で実質的な協議が行われるようになったこと自体は悪いことではない。ただ、予算案への賛成と引き換えのような形で、深く吟味しないまま、税制や政策などについて野党の主張をのむことが続けば、今後の歳出が膨れ上がってしまうことも心配せねばなるまい。

 与党側に自らの政策を受け入れさせようとするならば、その政策によって歳出が増えることへの責任が生じる。野党側には、財源まで視野に入れた、責任ある主張が求められる。

この記事をSNSで伝える:

  • X
  • facebook
  • line