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【12月19日付社説】除染土の閣僚会議/具体化進め関心を喚起せよ

2024/12/19 08:10

 政府は、東京電力福島第1原発事故に伴う除染で出た土の再利用や県外最終処分の具体化に向けた全閣僚参加の会議を設置する。石破茂首相が表明した。あす、初会合を開き、候補地選定に向けた動きなどを加速化する考えだ。

 除染土などの廃棄物は、中間貯蔵施設に約1400万立方メートルが保管されている。環境省が最終処分や再利用の基準案策定を進めているものの、最終処分の候補地選定は進んでいない状況だ。

 石破首相は14日に本県を訪問し、除染土などの2045年3月までの県外最終処分完了について記者団に対し「単なる決意表明を述べているわけではなくて、法律に規定された国の責務だ」と述べた。処分実現への強い意欲を示したことは評価できる。

 来年で法に定めた期限まで20年となるにもかかわらず、いまだに原則論を持ち出さざるを得ないというのは、処分に向けた動きが停滞していることの裏返しとみることもできる。踏み込み不足の感は否めない。閣僚会議でほかの省庁が参画することで、停滞を解消し、具体的な方策を打ち出せるかが問われる。

 これまで最終処分に向けた取り組みの中心となってきたのは環境省だ。しかし処分地選定の前段である、除染土の県外での再生利用の実証事業ですら、地元の反発により実現できていない。理解醸成が進まないことに引きずられる形で、処分地の選定を先延ばしする時間的な余裕はない。

 課題となっている理解醸成は処分地選定や、県外での再生利用の実証事業と並行して進めていくべきではないか。取り組みの具体化が進めば、除染土への関心と共に、受け入れへの反発も強まるだろう。こうした反応がある状況は、幅広い層に県外最終処分の意義と安全性を考えてもらう機会ともなるはずだ。

 環境省は先週、除染土の県外最終処分や再生利用に向けた取り組みを発信する新たな拠点を大熊町に整備すると発表した。現地での情報発信力の強化が狙いで、中間貯蔵施設の視察受け入れの拠点としても活用される見通しだ。

 県外での理解醸成が進んでいない現状では、中間貯蔵施設の現状を県外からの来訪者に知ってもらうのは有効だろう。

 ただし、県外処分の実現に向けて情報を届けるべき対象は、大熊町を訪れるなど原発事故や除染土の問題を積極的に知ろうとする人ではなく、関心がない、あるいは関心の薄い人であるのを忘れてはならない。

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