医薬品が健康被害を引き起こした薬害の教訓継承のため、被害者らが進める資料の収集や保管といった活動への補助金を増額するなど、厚生労働省が支援を強化することが5日、同省への取材で分かった。裁判記録や当事者の日記、被害者団体の活動録といった資料は、時間の経過や関係者の高齢化で散逸が懸念されている。
過去の薬害には、整腸剤キノホルムの副作用で神経障害が多発した薬害スモン、エイズウイルス(HIV)が混入した血液製剤を投与された血友病患者らに感染被害が広がった薬害エイズなどがある。被害者と支援者が昨年、一般社団法人「薬害研究資料館」を設立し、拠点施設が2025年度に稼働する見通しだ。
被害者や団体が管理できなくなった一部の資料は、保存と活用の在り方を検討してきた厚労省研究班が大阪市内で一時的に保管している。法人は今後、引き継いで活用方法を探り、被害者らが所有する他の資料も希望があれば受け入れる。保管に適した空調設備がある施設を、京都市内で確保する方針。国の補助金は施設の賃料や人件費などに充てる。