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【独自】バス転換、維持費176億円減 阿武隈急行、宮城県が試算

10/03 07:30

 経営が悪化する第三セクター・阿武隈急行(伊達市)を巡り、宮城県が鉄道以外の輸送手段に代替した場合の影響を詳細に分析し、同県側区間を路線バスに転換すると30年間の維持費が最大176億円減少すると試算していたことが2日、分かった。バス高速輸送システム(BRT)でも最大130億円減る。福島、宮城両県と沿線5市町は同鉄道の抜本的な経営改善策を検討しており、宮城県側は試算結果と利便性への影響を精査し、近く鉄道維持の可否を最終判断する。

 宮城県は調査結果を公表していない。福島民友新聞社は同県に対し、阿武隈急行に関する調査・分析資料を情報公開請求した。

 開示資料によると、同県は鉄道からの代替可能性として気動車や路線バス、BRT、レールバスなど11案を提示し、交通政策に詳しい仙台市のコンサルティング会社に調査を委託。昨年3月、計244ページの調査報告書が提出された。

 報告書によると、宮城県側区間を各輸送手段に転換した場合、2023~52年度の30年間で見込まれる維持費は【表】の通り。鉄路は30年で473億円の維持費が生じ、路線バスかBRTに転換した方が採算性は大きく改善する。技術・物理的制約を踏まえても路線バスとBRTを優位とした。事業方式も検討し、現在の直営から新会社に切り替えた場合、30年間でさらに2億円の収支が改善される。

 一方、阿武隈急行は通勤・通学利用が7割を占め、利便性も重要な判断材料になる。報告書は、所要時間や便数の増減などを基に〈1〉気動車か電気気動車を導入〈2〉BRT転換〈3〉路線バス転換―の順で利便性が高いと整理した。路線バスとBRTは丸森―槻木間での運行とし、県境の移動手段には踏み込まなかった。

 同県地域交通政策課は取材に「調査結果を参考にしつつ、新型コロナウイルス禍以降の状況などを加味し、数値を精査している。近く首長同士で意見交換する場を持つ予定だ」と述べた。

 調査は新型コロナ禍や物価上昇の影響、沿線人口の将来予測などを広く考慮した。全線をBRTや路線バスに転換した場合についても試算したが、本県側は鉄路維持の方針を固めており、宮城県側の判断が焦点となっている。

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