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【独自】利便性低下は不可避 阿武隈急行・維持費試算、決断の局面

10/03 08:40

 利便性か維持コストか―。第三セクター・阿武隈急行に関し、宮城県が内々にまとめた調査報告書は、代替輸送手段の検討に重要な二つの判断軸を突き付けた。全国にはバス転換後に利用が激減した例もあり、各自治体はまちづくりと財政への影響を見極め、決断する局面を迎える。

 報告書は宮城県が分析を求めた11案のうち、代替可能性が高い輸送手段として〈1〉気動車〈2〉電気式気動車〈3〉バス高速輸送システム(BRT)〈4〉路線バス―の4案を選定。技術的制約などを考慮し、路線バスとBRTをより有力と位置付けた。

 鉄路を維持した場合、宮城県側区間(丸森―槻木駅)を1日50本運行する。仮に路線バスに転換すると、30年間の維持費は299億円で鉄道より174億円抑制できるが、同区間の所要時間は48分となり、ほぼ倍増する。茨城県の日立電鉄線を念頭に、利用者は約7割減を見込んだ。バス運転士は14人の確保を要する。

 BRTに転換した場合、所要時間は7~10分増にとどまる一方、バス専用道の整備などの初期投資がかさみ、30年間の維持費は346億円。JR大船渡線を参考に、利用者は約3割減を想定した。鉄道より便数は1日6本増え、運転士は24人確保する必要が生じる。

 阿武隈急行は存廃が議論される各地の路線と異なり、通勤・通学が比較的多い。バス転換は利便性の低下が避けられず、採算性とのバランスをどう考えるかが判断を分けそうだ。

 各輸送手段の維持費は、新型コロナウイルス禍を挟んで利用者が順調に回復した前提で試算した。実際はより厳しい推移が見込まれ、宮城県は近況を反映した上で結論を導く方針。

 調査はほかに、鉄道のまま運賃改定や仙台直通便の増減をした場合の影響を含め、可能性を幅広く模索した。

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