巣作りになかなかのこだわりがあるらしい。「ファーブル昆虫記」に登場するアメデトックリバチは、石英の粒やカタツムリの殻などを使い、貝殻細工のような丸い屋根の巣をこしらえる。ファーブルも、このハチには美を感じる心があるのではないか―と記している
▼巣の中には、幼虫の食べ物となる毛虫が詰め込まれている。細い円筒形で、ガラスのように透き通った卵からふ化した幼虫は、じっくりと栄養を吸収し、成虫となり、巣立っていく
▼福島市の県立美術館のエントランスホールに、巨大なメロンパンのようなエアドームが二つ展示されている。開館40周年にちなんで開かれたワークショップで、園児や児童らが制作した作品だ
▼赤、青、ピンク、緑―。さまざまな色のビニール袋をパッチワークのように貼り合わせて作った屋根が特徴で、子どもたちの絵も描かれている。空気を送ってドームを膨らませる仕組みとなっており、誰でも中に入ることができる
▼ワークショップ当日、出来上がったドームの中をのぞいてみると、元気にジャンプしたり、寝転びながら絵を眺めたりする子どもらの姿があった。色とりどりの不思議な空間で過ごす体験が、心の栄養になるはずだ。