【6月15日付社説】森林環境税/適正配分で保全活動進めよ

06/15 08:10

 森林保全を目的とする新税「森林環境税」の徴収が今月から始まった。低所得者を除く約6200万人が対象で、1人当たり年1000円が住民税に上乗せされる。毎年約620億円の税収が見込まれ、国は2019年度から都道府県と市町村に交付してきた「森林環境譲与税」の原資とする。

 本県は県土面積の7割を森林が占めるものの、林業を担う人材が高齢化などで不足し、管理が行き届かない森林が増えている。土砂災害の防止、水源の維持、温室効果ガスの削減のためにも、政府と各自治体は貴重な財源を無駄なく活用し、森林の荒廃を防ぐ取り組みを推進することが求められる。

 自治体はこれまで、森林環境譲与税を使い、所有者から管理を委託された森林の整備、国産材の活用、公共施設の木造化などに充てている。しかし譲与税を活用していない自治体は多い。総務省などによると、22年度までの4年間で市町村に配られた1280億円のうち、約4割が事業に使われないままだった。

 譲与税は、私有の人工林面積や人口などに応じて自治体に配分される。これまでは人工林面積に応じた分が50%、人口が30%などとされ、森林の少ない都市部も対象になってきた。しかし、都市部では公共施設での国産材の利用などに事業が絞られるため、有効に活用されていない。

 一方、人口が少ない山間部の自治体などは配分額が少ない。このため政府は本年度、人工林面積分を55%、人口分を25%に変更し、山間部などへの交付額が増えるようにした。配分額が数十万円にとどまり、事業に取り組めない自治体もあり、配分見直しは当然だ。

 政府は引き続き、配分額が各自治体の取り組む森林保全活動に見合っているか確認し、必要な額を適正に配分する必要がある。

 国は各自治体に譲与税の使途をインターネットで公開することを求めている。予算を使い切るため必要性に欠ける事業が行われることは避けなければならない。国は事業の効果なども精査すべきだ。

 本県では06年度に県税として森林環境税が導入され、個人と法人から徴税している。他県でも同様の税を徴収しているケースは多く「二重課税」との声は根強い。

 県は、県税の森林環境税について、花粉の少ない苗木づくり、県民参加の植樹イベント、森林環境学習などに活用されている点を強調している。県は、国税による事業と差別化を図り、本県のかけがえのない森林を未来につなぐ活動を進めなければならない。

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