【7月19日付社説】防衛省不祥事 不正受給と接待/失った信頼は計り知れない

07/19 08:00

 不祥事の見本市というべき体たらくだ。国民の信頼を回復するのは容易ではない。

 防衛省は特定秘密の不適切運用のほか、潜水手当の不正受給、食堂での不正飲食、パワハラに関する処分を発表した。事務次官らを含む幹部も監督責任を問われ、訓戒などの処分を受けた。

 潜水手当の不正受給は、ダイバーが約5年半で計約4300万円を水増しして受け取っていた。74人が処分を受け、このうち11人が最も重い免職となった。施設の食堂で代金を払わず食事をしていたのは22人、防衛省内部部局では、3人の幹部に部下への威圧的な言動があったとして、それぞれ処分を受けた。

 特定秘密の不適切運用を加えた処分は218人に上る。異例の大量処分だ。いずれの事案も複数の隊員や職員が処分となっており、その責任全てを個人のものとして終わらせてはなるまい。

 防衛省はきのうになって、潜水手当の不正受給を巡り、海自の捜査機関である警務隊が4人を逮捕し、不起訴処分となっていたことを明らかにした。4人は懲戒処分にも含まれている。一連の処分の発表時に逮捕を伏せていたことを含め、今回の複数の問題は防衛省と自衛隊の内向きの体質を浮き彫りにしている。組織風土を根底から改めることが急務だ。

 海上自衛隊ではこのほか、潜水艦修理の契約を巡り、受注した川崎重工業から、乗員が飲食接待や金券などの提供を受けていたとの疑惑がある。隊員と川重側の関係や、契約が適正であったかを調べる特別防衛監察が行われている。

 川重は裏金を架空取引で捻出していたとみられる。その金が海自側への接待に使われたとすれば、契約金額にその分の費用が上乗せされているのと変わりない。川重だけではなく、利益供与を拒絶することなく受け続けてきた海自側の姿勢は許されるものではない。

 2023年度から5年間の防衛費総額を約43兆円とする政府方針に沿って、法人、所得、たばこの3税が増税されることになっている。防衛省は円安や物価高による装備品価格の上昇を受けていることを理由に、さらなる増額が必要との考えを示している。

 不正受給や民間からの接待は公金の使い道をゆがめることにほかならず、国民に増税の必要性を疑わせるものだ。

 中国の海洋進出の動きや台湾への圧力、北朝鮮の動向など東アジア情勢は緊迫の度を増している。その中で、自衛隊が国民の信頼を失ったことの代償は大きい。

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