楢葉、広野の両町にまたがるJヴィレッジは、サッカー日本代表の合宿などが行われる「聖地」として知られている。東京電力福島第1原発事故では対応拠点として機能し、5年前の全面再開を経て本県復興のシンボルとなった。
全国高校総体(インターハイ)のサッカー男子が26日、Jヴィレッジをメイン会場に開幕する。大会は暑さ対策のため、比較的涼しい浜通りで今年から固定開催される。8月3日までの期間中、両町といわき市の計6会場で全国の52チームが熱戦を繰り広げる。
選手たちは存分に力を発揮し、高校サッカーと聖地の歴史に新たな一ページを刻もう。
本県第1代表で初めての出場となる帝京安積は、2勝を目標に掲げる。第2代表として臨む大会常連校の尚志は、初の全国制覇を目指す。開幕を間近に控え、両校とも地元開催に懸ける熱意は一層高まっていることだろう。
県サッカー協会は約20年前、本県サッカーの活性化と競技力向上を目指し「サッカー王国ふくしまチャレンジ宣言」を打ち出した。王国の実現に向け、県内の高校を全国トップレベルのチームに育成し、プロ選手や日本代表選手を輩出する構想があった。原発事故の影響で取り組みは停滞を余儀なくされたが、県協会は現在、再チャレンジの旗を掲げている。
県勢の躍進は王国の実現に向けた原動力となる。帝京安積と尚志は、それぞれの目指す高みに挑戦し、本県サッカー界を大いに勢いづけてほしい。
試合の観戦には、高校生に限らず、県内の小中学生も足を運ぶはずだ。期間中などには、空いている試合会場を活用して、出場チームの控え選手らと県内のチームによる練習試合が行われる。
観戦や練習試合などを通して、全国レベルの技術や戦術を学ぶ絶好の機会となる。選手の競技力やコーチらの指導力の向上、さらには競技人口の拡大につなげていくことが大切だ。
期間中は選手やスタッフ、保護者ら約5万人の来場が見込まれており、浜通り各地で受け入れ態勢が整えられてきた。宿泊施設は選手に提供する栄養バランスの取れた食事の準備に力を入れたり、観光施設や飲食店などでは、本県の魅力や復興の現状を知ってもらおうと知恵を絞ったりしている。
サッカーを核にしたまちづくりで復興を進めていくためにも、固定開催の初年度の大会を成功させることが重要だ。Jヴィレッジや福島の名を高校サッカーの代名詞として根付かせていきたい。