雪深い村にやってきたK。測量師として雇われたはずなのに、雇った側の官庁の役人と一向に会うことができず、仕事を始められない。カフカの長編小説「城」は、巨大官庁に翻(ほん)弄(ろう)される異邦人の姿を描く
▼城と呼ばれる官庁の役人と何とか接触しようと試みるKに、村民たちはその難しさを口々に語る。彼らによれば電話しても担当者と話せる可能性は低そうだ。「こちらから城のだれかに電話をかけると、あちらでは下級の課のあらゆる電話のベルが鳴りだすのです」
▼いわき市は来年、市民からの問い合わせに一元的に応じる総合コールセンターを設置する。職員への直接の問い合わせを減らして業務に集中させ、市民サービスの向上につなげる
▼もう一つの目的は案内機能の強化だ。手元の資料で回答可能な内容にはオペレーターがその場で対応し、必要に応じて担当課につなぐ。回答を迅速化するとともに、問い合わせが複数部署間でたらい回しになるのを防ぐ
▼市役所は普段接点がない人にとっては遠い存在で、担当部署に行き着くだけで一苦労かもしれない。新たに窓口を担うオペレーターには、市民の疑問や困り事を受け止め、役所との距離を近づける存在になってほしい。