高齢者や障害者らが災害時に避難するには、多くの人の協力が欠かせない。要支援者の避難手順をまとめた個別避難計画の作成を契機に課題を洗い出し、平時から防災力を高めることが重要だ。
県内の多くの市町村で、計画作りが思うように進んでいない。県の最新のまとめでは、対象となる要支援者約14万3千人のうち、作成済みは1割の約1万5千人にとどまっている。
計画は要支援者の安全確保とともに、やみくもな避難行動による災害関連死を防ぐ効果が期待されている。ただ、健康状態や障害、生活環境など一人一人の状況を考慮する必要があるため、作成に時間がかかる。作成を担う職員の数やノウハウの不足などが課題となっている自治体もある。
今年も各地で災害が発生しており、県内もいつ豪雨などに見舞われるか分からない。各市町村は、作成業務を支援する県と連携し、浸水や土砂崩れのリスクなど緊急度を見極めながら、計画作りを加速させることが急務だ。
東日本台風などで犠牲となった人の多くは高齢者だ。歩行や食事などに介助が必要な高齢者らは平時でも外出が難しく、災害時に逃げ遅れるケースが少なくない。
体が不自由な要支援者が避難する場合は、多くの人手が必要となる。ただ国の報告書によると、民生委員や自治会などの人員不足に加え、責任の重さから近隣住民に避難支援を引き受けてもらいにくいなどの課題がある。
計画作りに向け、まずは要支援者の存在を地域住民らに知ってもらい、孤立を防ぐことが重要となる。支援の内容を安否確認のみとするところから協力してもらうなど、市町村には、地域の実情を踏まえて関係者と協議し、共助の基盤をつくることが求められる。
要支援者や家族に平時から取り組んでもらいたいのは、屋外に出る経路を確保するための家具の転倒防止対策や、非常用の持ち出し袋などの準備だ。足腰が弱って自室にこもりがちな人であれば、リハビリを兼ねて玄関先まで出る、避難経路を散歩して近所の人と顔を合わせるなどの訓練が万一の際に生きるだろう。
県が個人向けに提供している「ふくしまマイ避難シート」を活用すれば、誰とどこに避難するかといった情報や常備薬などの持ち物をあらかじめ整理できる。個別避難計画の作成にも役立つ。
要支援者や家族らは、避難を手助けする人たちが来た時に可能な限り速やかに行動できるよう、備えておくことが大切だ。