巨大地震の発生で、最優先すべきは命を守ることだ。事前の備えの徹底によって被害を最低限に抑えることが重要となる。冷静な対応を心がけてほしい。
日向灘を震源にきのう発生した震度6弱の地震を受け、気象庁は新たな大規模地震の可能性が相対的に高まっているとして、「巨大地震注意」の臨時情報を初めて発表した。中部から九州にかけ津波などの大規模被害が予想される南海トラフ巨大地震の想定地域の住民に、地震が発生したらすぐに避難できるよう準備を求めた。
巨大地震注意は、南海トラフの臨時情報で、最も警戒レベルの高い「巨大地震警戒」に次いで2番目に高いものだ。気象庁は「必ず地震が起きるという発表ではない」としているものの、今後1週間は、気象庁や自治体の発表する情報にいっそうの注意が必要だ。
巨大地震で最も警戒が必要なのは津波だ。きのうの地震では、発生からすぐに津波が観測された。東日本大震災では家族が心配で家に戻り、津波の犠牲になった人が多かった。地震が発生したらどのように行動するかや、家などに戻らないことなどを家族や職場で再度確認してもらいたい。
南海トラフの津波や揺れの想定域には、原発が複数ある。原発が一度事故を起こせば、被害のあるなしにかかわらず、避難者や社会に大きな混乱をもたらす。各事業者は事前の計画に基づき、安全を最優先にした対応が求められる。
非常時には信頼できる情報を基に行動することが大切だ。大規模災害の発生時には、交流サイト(SNS)で不確かな情報が大量に発信されることがある。臨時情報の段階でも、同じことが起きる恐れは極めて高い。情報収集には、新聞や行政の公式サイト、テレビ、ラジオなどを使い、SNSについては信用できる情報源で改めて確認することが肝要だ。
能登半島地震の際は、SNSで閲覧数に応じて支払われる収入を狙って、うその情報が発信され、救助の現場などが混乱した。うその情報は、本当に救助を求める人の命を奪いかねない。善意による情報の拡散も、事実かどうかを確認しない限りは慎むべきだ。
県内でも警戒が必要なのは、ビルの高層階をゆっくりと揺らす長周期地震動だ。この震動は地震の規模が大きいほど遠くに伝わる特徴があり、危険がある場合には緊急地震情報が発表される。緊急情報が発表されたら、高いビルに住居や職場がある人は揺れに備え、頭を保護し、体勢を低くして身の安全を守るようにしてほしい。