県職員の不正行為がまたしても発覚した。県の組織全体に緩みがあるのは明らかだ。綱紀粛正と再発防止を徹底すべきだ。
県発注土木工事の入札で設計金額を業者に漏らしたなどとして、地検郡山支部は、官製談合防止法違反と公契約関係競売入札妨害の罪で福島空港事務所建設課の50代主査を在宅起訴した。郡山区検は業者に入札の参加業者名を漏らしたなどとして、両罪でこの主査が所属する建設課の50代課長を略式起訴した。
また同支部は公契約関係競売入札妨害の罪で石川町の土木会社の元役員や従業員ら3人を在宅起訴した。このうち2人は前石川町長が逮捕、起訴された町発注公共工事を巡る官製談合事件に絡み贈賄の罪などで起訴されている。
起訴状などによると、県職員2人は2021年9月に入札を行った福島空港の工事用道路公共工事で、主査が設計金額、課長は入札参加業者名を元役員らに漏らしたとされる。事実であれば公平公正な競争を妨げる行為であり、断じて許されない。
県発注の公共工事入札では昨年6月、県中流域下水道建設事務所の主任主査(当時)が受託収賄と公契約関係競売入札妨害の罪で起訴されている。高い倫理観と順法精神が求められる公務員に不祥事が相次ぐのは、組織統治に不備があるからだと言わざるを得ない。
県は昨年12月、外部有識者の意見を踏まえ、懲戒処分の厳格化、法令順守意識の醸成に向けた職員研修の見直しなど、新たな再発防止策を打ち出した。しかし一人一人の職員の意識が変わらなければ不祥事は繰り返される。より実効性が伴う対策が必要だ。
空港事務所建設課の正職員はわずか数名だ。上司と部下の関係にある2人がそろって同様の不正に手を染めていたが、県の聞き取りに対し、情報を漏らしていたことは互いに「知らなかった」と話しているという。情報漏えいを許容するような組織の風土や体質がなかったか検証を急ぐべきだ。
主査は業者側から設計金額を教えるように求められ、金額を付箋に記載して渡したとされる。主査は「工事が工期内にできるか分からず、空港の業務に精通した業者なら効率的に工事ができると思った」と説明しているという。
県によると、この業者は空港関連の工事に精通しており、職員と従業員は親交があったようだ。両者の密接な関係が、今回の不正を生んだ可能性がある。県は、職員と業者の癒着を防ぐ取り組みも強化しなければならない。