土壌に多くの水分を蓄えることから、山は「緑のダム」と呼ばれる。台風シーズンを迎えるこれからの時期は、特に重要な存在。緑のダムと人工のダムが両立し、私たちを守ってくれる
▼災害の激甚化は時と場所を選ばなくなった。大きな被害の発生が関心を集めるのはもちろんだが、被害を防ぎ何事もなく乗り切った事例というのは意外と知られないままとなりがちだ
▼5年前の10月、県内に甚大な被害をもたらした東日本台風(台風19号)。会津若松市と下郷町の境にある阿賀川水系の大川ダムでは、事前放流などを行うことにより、止めどない雨の影響を抑えた
▼台風が通過した日のダム周辺の1日の降雨量は観測史上最大。それにもかかわらず大きな被害がなかったことが、いかにダム操作が適切だったかを示している。この対応は、日本ダムアワード洪水調節賞にノミネートされるなど関係者にはよく知られた話だが、一般の人にはなかなか伝わりにくい部分がある
▼会津の被害が小さく抑えられたのは、ダム管理者の奮闘があったから。そして、そのダムは山があってこそ力を発揮できる。きょうは「山の日」。普段は見過ごしてしまいがちな山の底力に思いを巡らせてみては。