パリ五輪が幕を閉じた。17日間にわたり、感動と希望を与えてくれた選手たちに感謝したい。
柔道は女子の角田夏実選手が日本勢の金メダル第1号を獲得し、男子の阿部一二三選手の2連覇で選手団を勢いづけた。スケートボードは吉沢恋(ここ)選手が女子ストリートを制するなど、新たな「お家芸」と言える活躍ぶりだった。
日本の金メダルは目標の20個に到達し、銀、銅と合わせた総数は計45個となった。金メダル数、総数はともに海外開催の五輪での最多記録を更新した。3年前の東京大会の開催国として得た経験を実りに結び付けた堂々の結果だ。
バドミントンは富岡高卒の県勢が奮闘し、混合ダブルスの渡辺勇大、東野有紗両選手が前回に続く銅メダルに輝いた。女子シングルスで初出場の大堀彩選手(会津若松市出身)が8強に入り、男子ダブルスの保木卓朗、小林優吾両選手は五輪初勝利を手にした。
東日本大震災と東京電力福島第1原発事故による避難を経験した選手たちは、競技に向き合い、成長の歩みを重ねてきた。これまでにも増して躍動する姿は県民の励みになったはずだ。
自転車トラック競技男子の窪木一茂選手(学法石川高卒)、競泳男子の松元克央(かつひろ)選手(いわき市生まれ)はそれぞれ2種目で入賞を果たした。サッカーではJFAアカデミー福島出身の選手や千葉玲海菜(れみな)選手(いわき市出身)が好プレーを見せた。世界に伍(ご)して戦った選手たちに拍手を送りたい。
新型コロナウイルス禍で無観客開催だった東京大会と異なり、多くの観衆が会場を満たした。勝敗や国・地域にとらわれず、目の前の選手たちをたたえる観衆の様子に、スポーツの素晴らしさを再認識した人は少なくないだろう。
残念なのは交流サイト(SNS)での誹謗(ひぼう)中傷が、選手らを傷つける事態が相次いだことだ。自国選手の活躍に期待が高まる五輪はプレーへの評価の範囲を超え、感情的な批判の矛先が選手たちに向きやすい。柔道女子の阿部詩選手の場合は、連覇を逃し泣き崩れた振る舞いが非難の的となった。
日本選手団は異例の声明を出し、侮辱や脅迫など行き過ぎた投稿に対して法的措置も辞さない構えを示した。国際オリンピック委員会(IOC)は、人工知能(AI)を使ってSNSを監視し数千件を超える投稿を削除したとしているが、中傷はやんでいない。
どうすれば言葉の暴力をなくせるのか。IOCやSNSの運営事業者だけでなく、応援する側一人一人に突きつけられた課題だ。