東京電力福島第1原発事故に伴っていわき市で活動していた双葉町商工会が5月、13年ぶりに事務所機能を町内に戻した。双葉町商工会の帰還により、双葉地方の8町村全てで、商工会がそれぞれの地元で会員事業所を支援する体制が整った。
8町村の商工会は東日本大震災と原発事故後、自ら避難しながらも会員事業所を支えてきた。それぞれの町村で避難指示が解除された後は、会員の古里での事業再開を補助金などを使って後押ししてきた。その間、廃業して退会する会員もあれば、復興事業に関わる事業者の新規加入もあった。
大熊町商工会を例にとると、7月末の会員事業所数は260で、震災時の2011年3月末の273と比べ数字上は微減だ。ただ、震災前からの会員の退会が150を超えた一方、震災後の加入は100以上あり、会員の約半数が入れ替わっている。各商工会の担当者によると、会員構成の変化は程度の差はあるが共通の傾向だ。
商工会の会員事業所の経済活動は、被災地の地域再生の原動力となるが、震災から時間が経過する中で帰還を伴う事業再開は落ち着いてきている。各商工会は、地域で活動する企業に対する販路拡大などの事業継続支援に加え、被災地での起業や新規創業の動きも積極的にサポートし、担い手が変化した双葉地方の経済基盤の底上げを図っていくことが重要だ。
富岡町商工会は21年度から、会員の情報をまとめた「とみおか便利帳」を作成している。「仕事を頼みたいが、今はどこに話をすればいいか分からない」との問い合わせが相次いだことを受けた対応で、担当者は「事業再開や新規開店などの情報が必ずしも共有されていなかった」と振り返る。
双葉地方では工業団地の整備などに伴う新規参入が続いているが、地域で活動する企業間の横の連携は必ずしも十分ではなかった。各商工会には、異業種交流会による震災前からの会員と震災後に進出してきた会員のつながりづくりを主導し、地域内での受発注の増加などの新たなビジネスチャンスを生み出すことを求めたい。
各商工会によると、双葉地方全体の人口減少で小売りやサービス業の事業再開、継続が厳しい状況にあるという。復興事業や阿武隈山地での風力発電事業が落ち着けば、さらに工事関係者による消費分が落ち込むとの懸念もある。各商工会は、相互の連携をさらに強化しながらまちづくりに参画し、双葉地方の交流、定住の双方の人口拡大を推進してほしい。