環境省は28日、東京電力福島第1原発事故後の除染で出た土壌の再生利用基準を定める省令改正案を巡り、パブリックコメント(意見公募)の結果、20万7850件の意見が寄せられたと発表した。再生利用に反対の声が多い一方、完全に同一の意見を除くと8277件だった。同省は改正省令を同日付で公布、4月1日に施行する。全国で再生利用を進めるための制度上の条件が整う。
政府は放射性物質濃度が1キロ当たり8000ベクレル以下の土壌を各地で公共事業などに再生利用する方針。省令案に肯定的な意見は14件にとどまり、多くは「説明が不十分」「全国に拡散すべきではない」などと否定的内容だった。同省は意見を79の類型に分け、考え方を公式ウェブサイトで示した。結果を踏まえた省令内容の修正はしない。
総務省によると、国のパブリックコメントで集まる意見は10件未満が大半。20万件を超えるのは極めて異例だが、東京都内で記者会見した環境省は、内容が全く同じものを「1件」とした場合、意見数は8277件だと説明した。残る19万9573件(約96%)は8277件のいずれかと一字一句同じだという。
政府関係者によると、公募では12万通余りの意見が寄せられた。箇条書きなどで複数の意見を1通にまとめた場合はそれぞれ数えるため、合計件数が増える。
基準を定める省令改正は5年前の意見公募で「説明不足」などと反対の声が多く寄せられ、先送りされた経緯がある。当時の意見総数は2854件だった。環境省は県内の再生利用実証事業でデータを集め、国際原子力機関(IAEA)からも評価を得るなどし、妥当性の裏付けを確保した。
浅尾慶一郎環境相は閣議後の記者会見で「策定した基準などに基づき、再生利用の必要性と安全性について分かりやすい説明資料を作成する」と述べ、改正省令を今後の理解醸成活動に活用する考えを示した。
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意見公募は行政機関が省令などを定める際、案の段階で広く一般市民から意見を募る制度で2006年に始まった。一部市民が件数を多く見せようとする行為について、総務省は取材に「規定には抵触しないが、制度の趣旨からは外れている」との見解を示した。