「紀州のドン・ファン」と呼ばれ、2018年に急性覚醒剤中毒で死亡した和歌山県田辺市の資産家野崎幸助さんが約13億円とされる遺産を市に寄付するとした遺言書を巡り、市側と野崎さんの親族が有効性を争った訴訟の判決が21日、和歌山地裁であった。高橋綾子裁判長は「筆跡や体裁から本人が全文や氏名などを自署したとみられる」とし、遺言書は有効と判断した。
市や判決によると、遺言書は13年2月8日付で「いごん 全財産を田辺市にキフする」と紙に赤ペンで手書きされていた。野崎さんの死後、経営していた酒類販売会社の役員宅で発見され、その後和歌山家裁田辺支部で遺言書の要件を満たしていると判断された。市側は18年に同支部で遺言書を確認し、19年に遺産の受け入れを表明。これに対し野崎さんの兄ら4人が20年、遺言書の無効確認を求め提訴した。
判決理由で高橋裁判長は、野崎さんが過去に書いたとされるメモなどと対照し、遺言書の筆跡と特徴が似ていると指摘。また筆記具に好みの色である赤ペンをよく使用し、遺言書を自署した裏付けになるとした。