ウクライナ首都キーウ(キエフ)の国内最大の小児病院、オフマディト病院にミサイルが直撃するなどして、各地で計40人超が死亡した8日のロシアの攻撃から1週間。同病院では、孤児院出身で苦学の末に医師になった女性スベトラーナ・ルクヤンチュクさん(30)が命を落とした。夢をかなえて仕事にまい進していた女性の人生を、凶行が打ち砕いた。
かつて炭鉱の街として栄えた西部リビウ州チェルボノフラード。さびれた街の公園のベンチで、スベトラーナさんが生活していた孤児院の元教師オクサナさん(58)が、ぽつりぽつりと教え子の思い出を語り始めた。
スベトラーナさんは1994年、リビウ州の刑務所で生まれた。母親は外貨取引を巡る事件で逮捕され収監されていた。父親は行方知らずで母親の親権は剥奪された。13歳の時、チェルボノフラードの孤児院に入った。
「勉強に一生懸命だった。聡明で真面目な女の子だった」(オクサナさん)。奨学生に選ばれるほど成績優秀で「子どもの医者になりたい」と周りに夢を明かしていた。