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【須賀川市長選ルポ】草の根と組織力が激突 16年ぶりの選挙戦

07/17 08:25

16年ぶりの選挙戦となった須賀川市長選。「草の根」と「組織戦」。有権者の関心を高めようと、両陣営は対照的な戦略で挑む

 21日投開票の須賀川市長選は、ともに無所属の新人で、元市議会副議長の安藤聡(53)、前市議会議長の大寺正晃(62)が論戦を繰り広げる。草の根で支持拡大を目指す安藤と、組織戦を展開する大寺。現職引退による16年ぶりの選挙戦は初当選同期の元市議2人による一騎打ちとなったが、戦略は対照的だ。「商人の町」として栄えてきた須賀川の次のかじ取り役を決める戦いを追った。(報道部・矢島琢也)

 告示後初の平日となった16日、時折、雨粒の落ちるJR須賀川駅周辺には、通勤通学などで行き交う市民に支持を訴える候補者の姿があった。2005年の市町村合併で現在の形になって間もなく20年となる人口7万2千人の都市には、厳しい財政事情や存在感のあるまちづくりなど課題が山積する。

 若者に政策訴え

 「一人一人の力が世の中を変える。力を合わせて明日の須賀川を創ろう」。5月末、大寺に先んじて立候補を表明した安藤は各地での遊説だけでなく、交流サイト(SNS)やユーチューブに演説の様子などを積極的に投稿、若い世代を狙って政策を訴える。

 23年8月の市議選に立候補せず、市長選に向けて準備を進めてきた。公約には子育て環境の整備や行政と民間の連携などが並ぶ。告示日となった14日の出陣式には、副議長時代の市議会議長や現職市議の一部が応援に駆け付けた。しかし、今回はあえて強固な組織を設けなかった。陣営は「しがらみがあると市民は興味を持てない。今の時代は緩やかなつながりが求められている」と強調する。

 総決起大会や集会などを開催する予定はなく、選挙事務所の運営も友人や知人らが中心だ。「SNSに投稿した動画の視聴数が増えている。関心がない人にも振り向いてもらえるようにしたい」と陣営関係者は意気込む。

 垣根越え相乗り

 「元気な須賀川にしたい。皆さんのために働くチャンスを与えてほしい」。一方、大寺陣営には政党や団体の垣根を越えた組織が集い、事務所に張り出された推薦状は100を超える。

 出馬表明は、告示まで約1カ月に迫った6月上旬だった。引退する現職が明確な後継者を指名せず、「後継」として副市長や県議の名が浮上する中、政財界がともに戦える候補者を絞り込み、最終的にまとまったのが市議会議長を務めていた大寺だった。

 市議会(定数24)の半数を上回る18人の市議や地元県議3人が支援し、有力な商工、農業団体なども陣営に付く。関係者の一人は「各団体が相乗りできる候補者を立てる。須賀川らしさが出た結果じゃないか」と話す。ただ、選対本部長を務める市議会議長の佐藤暸二は「急ピッチで態勢を整えたが、地区ごとの後援会をつくるいとまがなく、名前はまだ浸透していない」と警戒、「選挙は1人ではできない。つながりが大切だ」と語気を強める。

 両候補者はともに市中心部が地盤で、今後は市郊外にどこまで浸透できるかが鍵になりそうだ。週末、郊外の商業施設を訪れていた70代女性は「久しぶりの市長選だが(両候補者の)声はあまり聞こえてこない」と話し、「新市長を選ぶ選挙。市民に注目される選挙にする必要がある」と両陣営に注文した。(敬称略)


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