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民間協力、多様な処遇 「拘禁刑」来年施行、地域の理解が再犯防ぐ

07/23 12:00

犯罪を犯した人の立ち直りを支える保護司の大野会長。「社会とのつながりを保つことが重要だ」と訴える

 受刑者の特性に合った柔軟な処遇で更生を目指す拘禁刑の創設に伴い、処遇内容の多様化も期待される。刑務所だけではなく、民間企業などとの連携も重要になる中、全国では既に民間のノウハウを生かした処遇に取り組む刑務所もある。

 栃木県さくら市にある官民協働の刑務所「喜連川社会復帰促進センター」では、受刑者がセンター内に生息する希少植物を観察するという、全国的にも一風変わった処遇を行っている。

 受刑者に合わせて

 受刑者に命の尊さや感謝の気持ちを育んでもらおうと、昨年度から始まった。受刑者が自分好みの植物を画用紙にスケッチし、図鑑を活用して植物の特徴をまとめ、個人発表まで行う。東京都の環境団体が福島大や民間企業と協力して取り組んでおり、センターの井上裕道調査官は「受刑者の背景は一人一人異なり、多様な処遇を行えるのは受刑者のためになる。われわれには思い付かない民間のノウハウを生かせるのは大きい」と話す。今後、効果を検証するという。

 受刑者も罪を償えば、いずれ社会に戻る。ただ「過去に罪を犯した」という理由で、出所後に家を借りられず、職にも就けない人も依然として多いのが実情だ。「出所しても社会や地域になじめず、再び犯罪に手を染めてしまう人もいる」と県保護司会連合会の大野修司会長。行く先もなく、暴力団に所属せず犯罪を行う「半グレ」などと仲間になる―。そういった出所者を見てきた大野会長だからこそ、「出所前から社会とのつながりを保つことが重要だ」と訴える。刑務所は地域生活定着支援センターと連携して受刑者を社会に戻す手助けをしているが、福島刑務所の高野洋一所長は「地域社会まで私たちでは整備できない」とし、出所者の受け皿となる地域との協働が必要とする。

 受け入れる社会を

 拘禁刑を創設する改正刑法は2025年6月に施行される。拘禁刑の創設を巡る審議会に参加した山口県立大の水藤昌彦教授(司法福祉論)は「処遇をする際にどこまで受刑者の内心に踏み込んで良いのか、どこまで外部に委託できるのか、もっと深い議論が必要だろう」と指摘する。その上で「誰も社会で一人で生きていくことはできない。『あの人は悪い人だから』と遠ざけるのではなく、社会全体で受け入れる環境づくりが必要。社会の理解が次の犯罪を防ぐことにつながるはずだ」と水藤氏。矯正の現場が変わる中、再犯を防ぐ地域社会の在り方にも変化が求められている。

 福島刑務所 26歳以上で刑期が10年未満の犯罪傾向が進んでいる受刑者と、日本人と異なる処遇を必要とする外国人を収容している。女性受刑者を収容する福島刑務支所も隣接している。

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