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阿武隈急行存続議論、宮城県側方針示さず 沿線協議会会合

08/06 09:20

阿武隈急行の在り方について見解を語る宮城県の担当者(前列左から2人目)。向かって右隣は福島県の細川了生活環境部長

 福島、宮城両県や沿線5市町などでつくる阿武隈急行線沿線地域公共交通協議会は5日、宮城県庁で会合を開き、経営が悪化する第三セクター・阿武隈急行(伊達市)の在り方を議論した。来年3月までに抜本的な経営改善策をまとめる予定だが、宮城県側は鉄道維持への賛否を含めて方向性を示さず、目立った議論の進展はなかった。

 「意見集約、秋までに」

 実質的に協議を進める分科会の「阿武隈急行線在り方検討会」は1年5カ月間にわたり非公開で続いたため、この日は議論の進展状況が初めて公開された。

 宮城県は「(鉄道、バス転換などを含む)輸送モードの検討は秋までをめどに作業を進める」と説明するにとどめ、検討状況については言及しなかった。

 福島民友新聞社が入手した宮城県側のロードマップ(工程表)によると、同県は4月、鉄路維持のほかに気動車、バス高速輸送システム(BRT)、バスへの代替輸送案の検討を開始。10月中旬までに沿線市町と意見集約すると明記した。

 工程通り進んでいる場合、いずれの代替案も収益見込みや運行ルート・ダイヤ、新設駅・バス停など、7月末までに全体の8割程度の検討を終了。月2回開催している県と3市町の意見交換も、大詰めを迎えているとみられる。

 ただ、宮城県の担当者は終了後、取材に「現在は客観的な資料を集めている段階。秋までに意見集約できるかどうかは作業の進展次第だ」とし、方針を示す時期について明言を避けた。

 福島県と温度差、先行き懸念

 阿武隈急行の経営を話し合う5日の協議会では、福島、宮城両県と沿線5市町が鉄路の要否に関する意見を初めて公の場で表明した。「鉄路維持」を前提に協議を進めたい本県側に対し宮城県側は歩調がそろわず、温度差が鮮明になった。

 本県側は通学・通勤の利用が比較的多く、県と福島、伊達両市は鉄路維持で一致。利用促進を念頭に、朝夕の混雑時間帯に福島駅発着便を増やすことを改めて求めた。

 一方、宮城県側で鉄路維持の意向を表明したのは角田市と丸森町のみ。JR東北線が通る柴田町は「公共交通としての役割は重要」としつつ、経常損失を穴埋めする沿線自治体の負担割合について、協議の状況を説明するにとどめた。

 代替輸送案を検討している宮城県は「県境の利用がとても少なく、老朽化した設備も多額の修繕費が見込まれる」と指摘。「将来にわたってどうしていくか、責任ある判断をするべきだ」と強調した。

 座長の吉田樹福島大教授は終了後、報道各社の取材に「宮城県側は本来、議論の過程を明瞭にすることが求められる」と言及。「内部で検討した後に結論だけ示されても、どういう経緯で導かれたかが不明なら揺り戻しが生じる」と議論の先行きに懸念を示した。この日の会合で、阿武隈急行の冨田政則社長は期末損失の累計額が14億6000万円に達し、近く債務超過に陥る見通しを明らかにした。

 村井嘉浩宮城県知事は6月の定例記者会見で「鉄路を維持する場合、その分(他の)住民サービスが低下する。その覚悟を持って臨むかどうかだ」と語っている。仮に沿線3市町が「覚悟」を決めた場合の県の対応を尋ねると、同県幹部は「意向を尊重する」と短く回答した。

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