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腸内細菌…腎難病の原因、世界初解明 福島大、慶応大研究グループ

08/06 07:40

長谷耕二氏

 福島大食農学類付属発酵醸造研究所と慶応大などの研究グループは、腸を覆う細胞のバリアー機能の破綻が、指定難病の腎疾患「IgA腎症」の原因になることを世界で初めて解明した。バリアー機能が破綻されると、抗体が腸内細菌と結び付いて正常に働かずに疾患を引き起こすことが分かり、抗生物質で腸内細菌を制御したり、食生活で腸内環境を改善したりすることが予防や治療につながることが明らかになった。

 両大などが5日発表した。発酵醸造研究所の長谷耕二特任教授(慶応大大学院薬学系研究科教授)らの研究グループが解明した。研究では、腸のバリアー機能を保つための物質の一つ「AP―1B複合体」を欠損させたマウスを調べた。その結果、腸内の物質が体内に入り込み腸外のさまざまな病気と関連すると考えられる「腸漏れ」の特徴が見られた。さらに、抗体機能を持つたんぱく質の一つ「IgA」が腎臓の糸球体(老廃物をろ過する器官)に沈着したり、糖類が付く異常が見られたりと、「IgA腎症」の原因とされる症状が現れた。これらの症状は抗生物質によって抑制でき、腸内細菌の制御が治療に有効なことも示されたという。

 研究所の松田幹所長は「今後の研究の発展により、IgA腎症のメカニズムの解明や、新しい治療法の確立が期待される」としている。研究成果は7月25日付で国際学術誌に掲載された。

   ◇

 IgA腎症 腎糸球体に抗体機能を持つたんぱく質の一つ「IgA」が沈着することで引き起こされる病気。徐々に腎機能が低下し、最終的には腎不全に陥る可能性が高い。血尿やたんぱく尿が持続的に生じるのが特徴だが、自覚症状がないことも多い。国内での発症率は年間10万人当たり3.9~4.5人と推定されている。



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