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【新まち食堂物語】キッチンひまわり・猪苗代町 名物ソースまでぺろり

08/11 10:15

  • 動画付き
「昼休憩で来る忙しいお客さんも多いので注文から10分以内に出すのが目標」と話す雅代さん(永山能久撮影)
店の名物「土鍋煮込みハンバーグ(チーズのせ)」。奥は雅代さんお薦めの人気メニュー「チキン南蛮」

 地元の常連客が足しげく通う煮込みハンバーグの名店が猪苗代町にある。町役場から目の前の洋食店「キッチンひまわり」は、接客担当の小椋正美さん(73)、調理担当の雅代さん(72)夫妻が営む。雅代さんは「気付いたらオープンから15年もたつ。これほど長く続けるつもりはなかったけど、あっという間だったわ」と語る。

 若い頃からの夢

 雅代さんは若い頃から自分の店を持つことが夢だった。当時思い描いていたのは静かで優雅な古民家のレストラン。「もし場所が古民家だったなら1日限定2組とかで和食のコース料理を出そうと思っていた」と雅代さんは話す。「ゆっくりお客さんの相手をして、のんびりとご飯を食べてもらってね。短時間のランチタイムにお客さんで一気に混み合うなんて大変だと思っていたから」  ところが古民家は人気物件のため、県内外いろいろと探し回ったものの空きがない。古民家を諦め始めた頃に、以前は焼き肉店だったという猪苗代町の物件を紹介されて気に入り、北塩原村から移り住んで2009年にオープン。店名は雅代さんの好きな花の名前から付けた。「とりあえずここでやってみて、その先はおいおい考えよう」と話し合っていたらいつの間にか15年が経過し「今になったら、もう辞めるに辞められないね」と2人は笑い合う。

 洋食店は2人とも全くの未経験だった。オープン当初に何か名物メニューを作ろうと思い、知り合いの板前さんに相談したら「ハンバーグを土鍋で煮込むといい」とアドバイスをしてくれた。そうして生まれたのが名物の「土鍋煮込みハンバーグ」。土鍋のおかげで最後まで熱々で食べることができる。残ったデミグラスソースにご飯を入れ、絡めて食べる常連客も多い。ご飯のおかわりは自由だ。ソースが全部なくなり土鍋がきれいになって戻ってくると「うれしくなる」と雅代さんは話す。

 東日本大震災後は富岡町から猪苗代町に活動拠点を移した富岡一中や富岡高のバドミントン部の生徒たちも昼食時によく来ていた。ただ、いつもランチタイムの少し遅い時間に来るため、すぐにご飯が足りなくなる。その場合は雅代さんがスパゲティをゆでて出すと、ハンバーグのソースに絡めておいしそうに食べていた。生徒たちは猪苗代町から離れる直前も食べに来てくれて「富岡の子どもたちとの関わりが一番のいい思い出。五輪での活躍も毎回楽しみにしている」と2人は振り返る。

 タルタルも人

 ハンバーグと並んでチキン南蛮も人気メニューだ。もも肉ではなくヘルシーに胸肉を使い、タルタルソースは自家製。ラッキョウと万能ネギを使う独自のタルタルが特徴で、ここにもお店ならではのこだわりがある。以前はから揚げの人気が高かったが、タルタルの効果によりチキン南蛮が逆転したという。

 店のこれからについて尋ねると「もうこの年だから細く長くやれればいい」と雅代さん。続けて「でも、やっぱりいつか古民家レストランの夢もかなえたいわね」といたずらっぽく明かした。(伊藤雅将)

お店データ

■住所 猪苗代町字城南137の1

■電話 0242・62・4781

■営業時間 午前11時~午後2時半(ラストオーダー同2時)

■定休日 不定休(お盆期間は当日問い合わせを)

■主なメニュー
▽土鍋煮込みハンバーグ(チーズのせ)=1000円
▽チキン南蛮=950円
▽メンチ(チーズ入り)=1000円
▽とんかつ=900円
▽から揚げ=900円

 常連さんの思いやり

 正美さんの膝の調子が悪いため、店内には「品物を受け取って」と貼り紙を設置。座敷の来客者に向けた貼り紙だったが、その光景を見たテーブル客も次第に自分たちで運んでくれるようになった。「常連さんたちの思いやりでお店を続けられている」と雅代さんは話す。


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