県は、性的少数者など法律上の婚姻をしていないカップルの関係を公的に証明するパートナーシップ制度をスタートさせる。県営住宅への入居などの行政サービスが受けられるようになる見通しだ。新制度により、性的少数者など、社会的に少数派の人々が被っている不利益や差別の解消につながることに期待したい。
県が先月示した制度の骨子案によると、LGBTなど性的少数者のカップルのほか、異性同士で事実婚の夫婦も対象に含める。カップルが扶養する子どもや親についても家族として認め、証明書を発行するとしている。性的少数者を対象とした制度はこれまでに25都府県で導入されており、このうち5県が異性同士の事実婚夫婦を対象に含めている。
対面の届け出を避けたい人がいることを想定し、オンラインや郵送による申請を原則とする。伊達市など同様の制度のある自治体で証明書を取得した人も、県のサービスを受けられるようにする。
手続きに関する配慮を含め、社会生活上の不利益を取り除こうという県の姿勢は妥当だ。
県は導入に合わせ、市町村や民間事業所などに対する制度周知に力を入れるとしている。
骨子案に関する意見公募では、医療機関での面会や手術の同意など、家族であることが条件となる場面で使えなければ実効性が乏しいとの声が寄せられた。証明書があっても、家族として認めるかどうかは医療機関の判断となる。勤務先での扶養手当、忌引などの休暇の適用についても同様の懸念があるだろう。
カップルとして認められるのが行政のサービスに関することだけでは、不便解消の効果は小さい。県の制度導入を機に、医療機関を含めた事業所などは、性的少数者や事実婚のカップルへの対応を改めて検討してもらいたい。
県は方針表明近くまで、制度導入よりも性的少数者についての理解醸成が重要として慎重な姿勢を示してきた。本県には人間関係が濃厚で、関係の良好さと暮らしやすさが都市部に比べて密接に関係する地域が多く、制度を設けても、性的少数者が地域に溶け込むには大きな困難が伴うとの見方があったためだ。
県が制度導入に踏み切ったのは、多様性を認める社会的な潮流への対応で、地域の実情に変化があったわけではない。県や市町村には、引き続き性的少数者などを含め、全ての人々の人権や生活を守る大切さを浸透させていくことが求められる。