挑んでくる者を圧倒的な力でねじ伏せるからこそ、絶対王者と呼ばれる。将棋の世界では、史上最年少で永世二冠を獲得した藤井聡太さん、ボクシングだと、世界スーパーバンタム級の４団体統一王者、井上尚弥選手しかりだ
▼とはいえ、絶対王者にも死角はある。全八冠を手にした藤井さんは６月、叡王戦で敗れ、８カ月余りで全冠独占が崩れた。井上選手は５月のタイトルマッチで４団体の王座を防衛したものの、プロになって初ダウンを喫しファンをひやりとさせた
▼県が、大吟醸に適した新しい県オリジナル酒米の開発に乗り出した。狙いは山田錦に代わるものを生み出すこと。兵庫県から全国に流通する山田錦は、安定した性質できれいな味に仕上がるため、多くの酒蔵に選ばれている。酒米の絶対王者だ
▼１強だけに頼らず、気候風土に合った酒米を育てる取り組みが各地で広がっている。例えば、昨年の全国新酒鑑評会で金賞受賞銘柄数が日本一になった山形県。その半数は同県オリジナルの酒米を使っていた
▼県は有望３種類を今秋収穫し醸造試験を行う。育てやすい地元の酒米から、全国の日本酒ファンをうならせる美酒が生まれる。そうなれば絶対王者は取って代わる。
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