再生可能エネルギーの導入を促進するためにも、地域との共生を図る取り組みが最も重要だ。
福島市が来年4月の施行を目指し、大規模太陽光発電所(メガソーラー)や風力発電施設を規制する条例策定を進めている。市が示した条例の骨子案によると、施設を建設できない禁止区域を設け、それ以外の区域は許可制とし、事業者に工事開始から撤去までの各段階で届け出などを義務付ける。
市内では山地を中心にメガソーラーの設置が相次いでいる。このうち市西部の先達山では大規模な森林伐採で山肌が露出し、土砂の流出なども発生した。
このため市は昨年8月、災害発生や景観の悪化が懸念される山地へのメガソーラーの整備を望まない「ノーモア メガソーラー」を宣言した。ただ宣言以降も市には13件の事業計画の相談があり、7件は中止や変更となったが、6件は市が指導しても、事業者は中止や変更をしていない。
脱炭素社会の実現に向け、再エネ導入は不可欠だが、事業者の意向が優先され、地元の自治体、住民らの理解を得られないまま施設が整備されるのは望ましくない。
禁止区域などを設定し、設置を抑制する取り組みは既に多くの自治体で成果を上げている。市には先達山などの事例が二度と繰り返されることがないよう、実効性の高い条例の策定が求められる。
2012年に始まった国の固定価格買い取り制度(FIT)により、全国各地でメガソーラーの設置が急増した。このため適地が少なくなり、最近は民家に近い里山にも事業が計画されている。しかし森林の伐採などで地下水の水質低下を招いたり、土砂災害が確認されたりして、地域住民とのトラブルが各地で後を絶たない。
脱炭素のためとはいえ、二酸化炭素の吸収源でもある森林が大量に伐採されるのは、環境保全の動きに逆行することになる。住民らを災害などに巻き込む恐れのある開発は看過できない。
事業者は住民らから厳しい目が注がれていると十分認識し、事業を進めなければならない。
国は4月施行の改正再エネ特措法で、再エネ事業者が事前に住民説明会などを行うことを事業の認定要件に加えた。また関係法令や条例、認定基準に違反している場合、FITなどの交付金を一時停止する制度を設けた。
既に交付金の停止措置を受けた業者もいる。国と自治体は事前審査や各種手続き、現地調査などを強化し、業者らに法令順守を徹底させる必要がある。