南相馬市で、宇宙関連産業の企業進出が相次いでいる。宇宙関連産業を巡っては民間の参入が著しく、世界的な市場規模が2040年までに100兆円規模に拡大するとの予測もある。市は4月に商工労政課内に宇宙関連産業推進室を設け、事業者の受け入れなどに本腰を入れている。
南相馬市の宇宙産業との関わりは22年、ロケット開発ベンチャー企業との連携協定を結んだところから始まった。その後、気球からの衛星ロケット打ち上げ、地球に帰還できる人工衛星の開発に関わる企業などが次々と進出し、現在までに6社が市と協定を結び、南相馬をロケット打ち上げ実験などの活動拠点としている。
ロケットの打ち上げは、地球の自転速度を活用し効率良く宇宙空間に到達させるため、東向きに発射するのが一般的だ。市によると、東が太平洋に面し首都圏からのアクセスが容易で、かつ航空機や船舶の運航が少ない地域を絞り込むと、南相馬が適地として注目されているという。
国内でも起業が進んできた宇宙関連ベンチャー企業は、企業間のネットワークなどを通じて活動場所を選ぶ傾向にある。市はこれまで進出してきた企業との関係を生かし、地理的な好条件に加え多様な実証試験ができる福島ロボットテストフィールドの存在などをアピールし、宇宙関連産業のさらなる集積を図ってもらいたい。
航空と宇宙の関連産業は、浜通りに新産業を集積する福島・国際研究産業都市(イノベーション・コースト)構想の重点分野に位置づけられてきた。部品供給などで成果を上げているが、これまでの取引先は大企業などが多く、既存の資機材のサプライチェーン(供給網)に参入するには、技術がある企業でも大きな壁があった。
ベンチャー企業による宇宙開発は始まったばかりで、資機材の供給網の構築はこれから本格化していく。ロケット打ち上げ拠点に近い場所からの部品調達は低コストでの開発に欠かせないため、南相馬への産業集積は大きな好機だ。市は県や研究機関とも連携し、県内企業の宇宙関連産業への進出を後押ししていくことが重要だ。
南相馬市では、進出企業とテクノアカデミー浜の連携が始まり、ロケットに生徒が作製した部品が使われた。別の進出企業は、人工衛星画像を活用し農地で行われている作付けの状況を確認する取り組みを進めている。市には、宇宙関連企業の進出がもたらす好影響を製造業以外の分野にも最大化していく戦略づくりを求めたい。