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デブリ取り出しミス、高線量下の作業準備不足 東電、甘さ露呈

09/06 09:45

デブリ取り出し装置を押し込むパイプ(左の4本と奥の1本)(東京電力提供)

 東京電力福島第1原発2号機からの溶け落ちた核燃料(デブリ)の試験的取り出し初日に発生した作業ミスは、協力会社任せの体制や準備不足など東電の甘さを露呈した一方、高い放射線量と限られた空間内で行われ、「廃炉の最難関」とされるデブリ取り出し作業の難しさも浮き彫りにした。

 今回、接続順の間違いがあったパイプは、5本を順に接続して取り出し装置を格納容器の貫通部に押し込むほか、ケーブルを通して電気を供給するなどの役割があった。

 東電が5日公表した調査結果によると、5本のパイプは7月22日に2号機建屋内に搬入された。27日には、作業を担当する三菱重工と下請け企業の作業員が格納容器近くに運搬する作業を行った。作業員の被ばく線量が作業を終了する規定の数値に近づいた段階で、運搬が済んでいたのは4本だった。しかし高線量から作業の最終確認はできず、元請け側には5本の運搬が完了したとの報告があった。

 翌28日には運搬したパイプに順番通りケーブルを通す作業が行われ、この際にパイプが足りないことが判明した。元請け側の作業員が残った1本を運搬したが、その際にパイプに記載されていた番号を確認せず、下請け企業作業員からの報告でパイプの順番を別のパイプと誤認した。29日にケーブルが通された4本のパイプと運搬した1本を並べ替える作業を行ったが、接続順の認識が間違ったまま準備を終えた。高い線量で作業時間が限られることから、パイプの番号を全て再確認するなどの作業は行われなかったという。

 30日の東電社員による確認では、パイプにケーブルが通っていることは確認したが、パイプの順番の確認は行われなかった。結果、8月22日に行われた直前の準備作業まで間違いが見逃されていた。

 東電によると、作業が行われた建屋内は、毎時数ミリシーベルトという高い放射線量のため作業時間が限定されている。また全面マスクなどを身に着ける必要があり、作業がしづらい環境にあるという。東電は今回の準備作業を「一般的な作業」と位置付け、デブリ取り出し作業本番ほど事前準備などを重視していなかった。東電の担当者は「高い線量と、重装備を必要とするという観点が足りていなかった」と反省を口にする。

 東電は今後、デブリ取り出しの工程全般で社員による確認を徹底したい考えだが、高い放射線量下での作業を継続的に確認するには、体制の強化も必要となる可能性がある。5日会見した東電福島第1廃炉推進カンパニーの小野明最高責任者は「重要な工程は念には念を入れて対策を行ってきたが、(今回は)管理が十分ではなかった。準備作業を含めた工程全般について精査し、当社自身による確認を行っていく」と語った。

 県が対策の徹底東電に申し入れ

 東京電力は5日、県にも調査結果を説明した。調査結果を受けて県は東電に対し、〈1〉作業を協力会社任せにせず東電が責任を持ち安全管理を徹底すること〈2〉事前に作業のリスクを想定して対策を取ること〈3〉県民に不安を与えないよう分かりやすい情報発信に取り組むこと―の3点を申し入れた。

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