国際的な枠組みを生かし、東日本大震災と東京電力福島第1原発事故からの復興や、地方の課題解決につなげることが重要だ。
国連の人材育成機関「国連訓練調査研究所」は11月にも、「地域リーダー国際研修センター(シファール)」をいわき市に開設する。講座や実践的な訓練などの教育プログラムを通じ、持続可能な開発目標(SDGs)の達成や地域特有の課題解決に取り組むリーダーを育成する。開設は日本で初めてで、世界では32カ所目となる。
いわきの拠点「シファール・ジャパン」では本県復興と、世界に通じる普遍的な課題に位置付けられた、地方都市の人口減少の解決に取り組む人材を育てる。課題に対処する中で得られた好事例や教訓は、シファールのネットワークを通じて、各国と共有される。
国連は復興を地域特有の課題に位置付けているものの、防災やエネルギー政策の在り方など現段階でも世界と共有し得る教訓は多い。地域のリーダー育成のみならず、国際社会の発展に本県復興の知見などを生かす意義は大きい。
市と東日本国際大などを運営する学校法人昌平黌がシファール・ジャパンの事務局を担う。復興や防災、人口減少などをテーマに10件ほどの講座を設け、市内外の若者や市内の企業の社員ら年間2千人程度の受講を目指す。
課題の解決には、国際的な視点や前例にとらわれない創造性を持ったリーダーの育成が欠かせない。市と昌平黌は、質の高い教育プログラムで若者の学びと成長を後押しすることが肝要だ。
教育プログラムなどの構築に当たり、事務局では、シファール・ジャパンに対して専門的な立場から助言を行う組織の設置を検討する。国や県、企業、研究機関などには、国際的に高い知見を持つ専門家の派遣などで協力することが求められる。
シファール・ジャパンの教育プログラムの柱として検討してほしいのは、国連訓練調査研究所が提唱するテーマの一つ「社会的包摂」に含まれるジェンダー平等だ。復興を進めるとともに、人口減少の課題を乗り越えるには女性の社会参画の拡大が欠かせない。
しかし、国際社会と比べて男女格差の解消が進んでいない日本国内の中でも、本県を含む地方の取り組みはさらに遅れている。
シファール・ジャパンでは、他国とオンラインでつないだ講座も想定されている。各国の価値観に触れる機会を生かして地域社会の意識変革を促し、ジェンダー平等実現の推進力となってほしい。