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【9月15日付編集日記】同じ視点

09/15 08:00

 人間という種を科学的に探求する人類学の分野で、信頼できる結果を得るには観察やインタビューを中心とした現地調査が必須だ。オセアニアに住む民族の研究にこの手法を本格的に導入したポーランドの学者マリノフスキーは、先駆者ならではの苦労を多く経験した

 ▼現地の足となる舟のこぎ手が見つからないのは日常茶飯事。話を聞くためにプレゼントしていたたばこが尽きてしまうと、彼に近寄る人がいなくなることもあった

 ▼彼が重視していたのは、距離を縮めながら長期間にわたって生活を共にし、通訳を介さずに同じ言葉で話すこと。そうすることで研究対象の人々がどのような世界観を持っているのか、その視点を自分のものにできると考えていた

 ▼首都圏の大学生たちを被災地に案内する機会があった。原発事故当時からあまり変化のない道路沿いのバリケードを見て驚いたり、原発立地県の出身者として避難の難しさを実感したり。実際に現地を訪れ、話を聞いて考えることは十人十色だ

 ▼きょうは福島市で自民党総裁選の地方演説会がある。気になるのは、本県の問題を彼らが共有できているかどうか。自身の考えを伝えつつ、現地の声もしっかり持って帰ってほしい。

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