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【9月15日付社説】敬老の日/高齢者の活力生かす社会に

09/15 08:05

 県内に住む人の3人に1人は65歳以上だ。高齢者がそれぞれ持っている力を発揮しながら、生き生きと暮らせる環境を整え、本県全体の活力向上につなげていくことが不可欠だ。

 高齢者に最も期待したいのは、これまで培ってきた知識や技術を今後も社会のために生かしてもらうことだ。

 これまでの65歳までの定年延長や継続雇用制度の導入などに加えて、2021年の法改正により、現在は70歳までの希望者全員を対象とした継続雇用などが努力義務となっている。全国で深刻な労働力不足に陥っていることもあり、高齢者の就業率は年々伸びており、65~69歳で5割、70~74歳でも3割を超えている。

 高齢者雇用の割合は、大企業よりも人手の足りていない中小企業の方が高い。ただ、待遇は定年前よりも低くなるのが一般的だ。継続雇用などの高齢者が業務に精通し、必要な知識や技術を持つ人材であることを考えれば、望ましい状況ではあるまい。

 少子化により今後も労働力人口とされる15~64歳の減少が続く以上、働くことを希望する高齢者の待遇改善は避けて通れない課題だ。継続雇用となった人の報酬や長く続いてきた60歳定年制の見直しなどを含め、高齢者の労働環境の再構築を進める必要がある。

 仕事の第一線から退いた高齢者の活力を維持してもらうことも、重要な課題だ。健康上の問題で日常生活が制限されない「健康寿命」を伸ばす取り組みの充実、強化が大切となる。

 行政などに特に力を入れてもらいたいのは、要介護の前段階に当たるフレイルの予防に役立つ習慣の普及だ。フレイルは加齢とともに心身の機能や社会とのつながりが弱くなっている状態を指し、何も対策をとらないと介護が必要となる恐れが高まるとされている。

 規則正しく3食を取ることや、生活のなかにウオーキング、ストレッチ運動を取り入れることの重要性を知ってもらうための取り組みを強化してほしい。

 高齢者が同世代や若い世代と交流できる機会を増やすなど、社会とのつながりを保つことへの支援も求められる。

 高齢者の生活を潤いあるものとすることは、社会全体を明るくする。高齢者を取り巻く課題を解決していくことは、後に続く世代の暮らしやすい、快適な老後にもつながるだろう。あすは敬老の日だ。高齢者と自身の老後をより良くするための方策について考えるきっかけとしたい。

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