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【9月24日付編集日記】常磐興産

09/24 08:10

 「いわきの石炭産業の父」と呼ばれる片寄平蔵は江戸時代末期、材木商としていわきと江戸を行き来していた。石炭に関心を持ったきっかけは、開国を迫り度々訪れていた米国の黒船だった

 ▼石炭が巨大な船の燃料だと江戸の取引先から聞かされた片寄は、いわき市内郷の弥勒(みろく)沢で石炭の露頭を発見し、採掘事業に着手した。その後の日本の近代化を支えた常磐炭田の礎を築いた

 ▼その炭田をルーツとする常磐興産が、米国の投資ファンドに買収されることが発表された。ファンドの子会社として引き続きスパリゾートハワイアンズを運営する方針だ。ただ、地域に根差した企業の突然の発表への衝撃は大きく、「いわきに黒船が来た」と表現する市民もいた

 ▼買収について市内では心配の声がある一方、前向きに捉える意見も多い。新たな設備投資で老朽化した施設を更新し、外資のノウハウを生かしてインバウンド(訪日客)を取り込めば、さらなる活性化が見込める

 ▼片寄は石炭の重要性を予見し商機をつかんだ。約60年前、石炭から石油へと代わるエネルギー革命の波にさらされ、観光業に転じた常磐興産はこの転機をどう発展につなげるのか。変化しなければ見えない未来がある。

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