塩原村裏磐梯地区の中心部にある「タカ食堂」は、観光客や地元客で連日にぎわう人気店だ。入店すると金髪にピアス、スカバンドのTシャツに短パン姿の店主高間舘(たかまだて)賢一さん(54)が元気に出迎えてくれる。迫力の見た目とは裏腹に、穏やかな物腰の賢一さんは「観光地にしては変わった店でしょ。この村にはない変なことをやり続けたい」と話す。
かつては仙台市で長年暮らし、趣味の釣りが目的で裏磐梯の桧原湖によく来ていた。豊かな自然環境が気に入り、10年ほど前に妻美穂さん(51)とともに裏磐梯に移住。仕事はキャンプ場の管理人から始まり、モーターボートの運転手やワカサギ釣りのインストラクター、ペンション経営と経験していく中で、一軒の空き店舗が気になり始めた。
丸太造りの外観
丸太造りのおしゃれな外観で、裏磐梯の中心部交差点脇に位置し、立地もいい。以前はソースカツ丼や山塩ラーメンなど、幅広いメニューを提供するそば店だったが、当時の店主は体力の限界を迎えて店を閉めていた。賢一さんも常連の一人で「ソースカツ丼を初めて食べたときはあまりのおいしさにびっくりした」と振り返る。
大家でもある前の店主に「ここで食堂がやりたい」と伝えると「好きに使いなさい」と快諾され、昨年4月に店をオープン。ソースカツ丼は前の店の味をそのまま引き継ぐことにした。
店は地元客に足しげく通ってもらいたいため、専門店ではなく、食堂のスタイルにした。敷居を低くするため、店名にもあえて食堂の文字を入れた。自身の名字から「高間食堂」、見た目から「金髪食堂」、妻の名前から「美穂食堂」も候補にしていたが、言いやすさから自身の愛称のタカ食堂に決めた。賢一さんがホール、美穂さんが調理を担当している。
店の名物は豚バラチャーシューに目玉焼きを乗せた「タカ丼」。屋号が付いたメニューを出したくなって悩んだ末に、賢一さんが酒のつまみとして気に入っていたチャーシューエッグを冗談半分で丼メニューにすると、客から大好評だった。「観光地らしくないシンプルなメニューでしょ。そういう気取らなさが良かったんじゃないかな」
育英の定番再現
県内では珍しいカレー仕立てのスープで調理した「まかないカレーラーメン」も人気だ。仙台育英高(宮城県)出身の賢一さんが、当時の学食で定番だった思い出の味を再現した。同級生からも「懐かしい味だね」と太鼓判を押されたという。
料理好きの美穂さんは「おいしいと言ってもらえるのがうれしい。自分の店を持つのが昔からの夢だった。料理を作ることがとにかく楽しいので、メニューは今後もどんどん増やしていきたい」と意欲を見せる。
賢一さんも「やってみたいことはまだたくさんある」と意気軒高だ。「会津の観光地だと、どうしてもソースカツ丼や山塩ラーメンを求められるが、新しいことにもチャレンジしたい。これからも新メニューで常連さんをたくさん驚かせたいね」と力強く語った。
■住所 北塩原村桧原字剣ケ峯1093の468
■電話 0241・23・9888
■営業時間 午前11時~午後3時(10月末まで土曜日のみ午後5時半~同7時半も営業)
※営業日時は公式インスタグラムで確認できる
■定休日 月曜日、第1、第3火曜日
■主なメニュー
▽タカ丼=1100円
▽カツカレー=1200円
▽ラーメン定食C=1400円
▽まかないカレーラーメン=850円
看板は三輪バイク
店のトレードマークは店名が入った青い三輪バイクで、記念撮影をする来店者も多い。当初は出前で使う予定だったが、現在は看板代わりに店の前に置きっ放しにしている。バイクが趣味という高間舘賢一さん。釣りは最近休んでいるが、「そろそろ再開しようかな」と話した。