「たばこを吸わない自分は自分じゃないぐらいに思っていましたね」。日本禁煙学会が主催した禁煙CMコンテストの入賞作品の中で、喫煙歴40年だった漫画家、内田かずひろさんが振り返る。2年間の禁煙により、病院に行っても良くならなかったせきが治まり、体が軽くなったと変化を語る。
喫煙者の多くは、健康に悪いと分かっていながら、自分の意思で吸っていると思っているはずで、冒頭の言葉に共感する人は少なくないだろう。ただ、喫煙をライフスタイルに位置付けたり、ストレス解消のためと理由を付けたりするのは、脳を錯覚させるほど強い依存性があるニコチンの影響で、本当の意思とは言い難い。
6日まで禁煙週間。ニコチン依存症に気持ちだけで立ち向かうのは容易ではない。自分や子ども、孫らの健康を守りたいなどの思いがあるならば、一人で無理せず、禁煙外来で医師の力に頼ろう。
「脱タバコ 口臭スッキリ パパステキ」「父の愛 禁煙10年 ぼく10才」。これは県が昨年度募った「たばこ川柳コンテスト」で入賞した子どもたちの作品だ。たばこをやめて増した父親の魅力や、子どもの健康を思ってくれたことへの感謝が表現されている。
家族らの一言が禁煙を始めるきっかけや、継続するための精神的な支えとなる。ニコチン依存を抜け出し、自らを変えようと頑張っている人を応援してほしい。
禁煙中の人が「1本だけ」と魔が差してしまう場所の一つにコンビニがある。たばこが売られ、店舗の敷地内で喫煙している人の姿をよく見かけるコンビニに近づかないよう指導する医師もいる。
青森市は2021年度から、5月31日の世界禁煙デーに合わせ、コンビニ敷地内の灰皿を1日だけ撤去、移動するなどの協力を市内の約130店舗に求めている。受動喫煙の防止が目的だが、禁煙を考えるきっかけや禁煙中の人が誘惑される機会を減らすことにつながり、意義は大きい。
日本禁煙学会によると、海外の先進国などのコンビニでは、たばこが客の目に触れないようになっており、購入時には「体に悪いよ。それでも買うの?」などと確認されることがあるという。一方、訪日客が、店頭で堂々とたばこが販売されているのを見て驚くほど、日本の規制は遅れている。
県や市町村はコンビニの協力を得て、まずは短期間、灰皿を撤去し、販売棚を目隠しするなど禁煙環境を整えてはどうだろう。全国ワーストの本県の喫煙率を下げるには、踏み込んだ対策が必要だ。