衆院解散を受け、15日公示、27日投開票で行われる第50回衆院選は事実上の選挙戦に突入した。新たな区割りの下で初の選挙となる県内4小選挙区は候補者の顔ぶれも固まり、15日の公示を前に各陣営が支持拡大を急ぐ。県内各選挙区の情勢を分析する。
福島3区
3区の面積は6653平方キロと県全体の5割近くに上り、多様な地域性の下で前職と新人計3人が争う。
立憲民主党前職の小熊慎司氏(56)は2021年の前回衆院選で優勢だった都市部での得票拡大に向け、従来の支持層に加え、無党派層への浸透に注力する。陣営は対立候補に岩盤支持層で劣るとし、「少しでも投票率を高めたい」(陣営幹部)と浮動票の掘り起こしに躍起だ。
新たに選挙区に加わった県南8市町村では立民前職から地盤を受け継ぎ、市町村単位に後援会を組織した。自民党の裏金事件を踏まえた政治改革を訴え、支持拡大につなげる方針だ。
無所属での出馬となる前職菅家一郎氏(69)は派閥裏金事件に関わったとして自民党が9日に非公認を決定。混乱が広がる中、公認なしでの出馬を決断した。政見放送ができず、ビラの枚数も減るなど広報力は低下し、応援弁士も人脈に頼らざるを得ない。
一方、党県連は組織態勢を維持し、菅家氏を全面支援する方針だ。JAや商工団体など自民の支持母体にも応援を継続する動きがある。地元の会津若松市で上積みを図り、白河、喜多方の両市でも浸透を狙う。
共産新人の唐橋則男氏(63)は喜多方市農協職員や労働組合役員を経験した。生活苦の改善を旗印に、反自民票の受け皿を目指す。
福島4区4区は8期を務めた旧5区の自民前職が引退し、新人3人が復興・創生を最大の論点に政見を交わす。
自民新人の坂本竜太郎氏(44)はいわき市議を経て県議2期を務めた。立候補表明が衆院解散の8日前と出遅れたが、元自民党衆院議員で父の故剛二氏の地盤もあり、票田の同市では高い知名度を誇る。旧5区前職の吉野正芳氏は剛二氏とかつて同選挙区の公認を争い、後援会組織などの継承も注目を集める。
相双地区は自身にとって未知の領域だが、地元県議や市町村長らの組織は厚い。政権与党の一員として浜通りの再生を進める決意を訴え、初当選を目指す。
立民新人の斎藤裕喜氏(45)は3人で唯一選挙や議員の経験がなく、党の支援を受けながら「手探り」で浸透を図る。9月中旬の立候補表明後は街頭活動を重ね、課題の知名度不足解消に取り組んできた。
選挙戦に向けた組織態勢の構築は徐々に進んできたが、短期決戦となり、労働団体など党の支持組織や無党派層への浸透はこれから。交流サイト(SNS)の活用も進める考えで、陣営幹部は「まずは大票田のいわき市から名前を広げていく」と話す。
共産新人の熊谷智氏(44)は、前回旧5区で獲得した約5万5千票が目標。比例票も見据え、いわき市を中心に支持を呼びかける。