【11月3日付社説】双葉地区の教育構想/探究と多様性学ぶ先進地に

11/03 08:08

 県教委は9月、双葉地区の教育構想を改定した。「真の国際人として社会をリードする人材の育成」を基本目標に、双葉地区8町村の児童生徒の課題解決の力を伸ばし、地区の再生につなげていくことを目指している。

 双葉地区の教育構想は、日本サッカー協会(JFA)などと協力し2006年に始まった。富岡高が富岡、楢葉、広野の3町と連携し、国際感覚を養う英語教育やサッカー、バドミントンなどのトップアスリート育成に力を入れた。原発事故の影響で富岡高が休校となると、中核をふたば未来学園高に変更、対象範囲を双葉地区8町村に広げて復興を担う人材を育成する側面も強化した。

 今回は双葉地区での小中学校の帰還や義務教育学校の開校を受けた改定で、高校と8町村の中学校を結ぶ連携型中高一貫教育など構想の大枠を継承する内容とした。ただ、これまでの取り組みを見ると、探究の学習プログラム「ふるさと創造学」を共同実施するなどの成果がある一方、高校からの英語教師派遣は広野、楢葉にとどまるなど全域をカバーする交流が不十分な部分もある。

 双葉地区の小中学校では、一人一人に向き合い個性を伸ばす少人数教育が進められてきた。県教委には、構想改定を機に町村との関係を再構築し、彼らがふたば未来学園の先進的な授業を通じ、さらに学力を高めていくような新たな教育連携を実現してもらいたい。

 構想には、新たに「双葉郡を多文化共生社会の先進地に」とする将来像を掲げた。浪江町での福島国際研究教育機構(エフレイ)の整備に伴い外国籍の子どもの増加を見込んだ対応で、日本語指導が必要な児童生徒らへの初期指導教室の整備を検討するとした。

 優秀な外国人材を招くには、子弟を受け入れる教育環境の整備が不可欠で、日本語教室の必要性を示したのは評価できる。県教委には専門的な教員の配置などを通じて、外国籍の子どもが日本語を学び学級に溶け込み、それが地元の子の多文化理解につながるような学校づくりを主導してほしい。

 構想初期から継続するアスリート育成の成果は、パリ五輪のバドミントンでの卒業生の活躍などで十分に証明されている。近年はレスリングが優秀な成績を収め、サッカーのJFAアカデミーも静岡県から帰還した。県教委は全国の有望選手がふたば未来学園を進学先に選び、卒業後も地元とつながり本県の応援団となってくれるよう、競技団体と指導者派遣などの関係強化を進めることが重要だ。

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