会津若松市のパチンコ店「ビックつばめ会津若松店」で現金約2800万円が奪われた事件で、会津若松署は19日午前7時50分ごろ、強盗を装って現金を盗んだとして、盗みと建造物侵入の疑いで同店従業員の男(23)=会津美里町字文殊西甲=を逮捕した。この事件を巡る逮捕者は3人目。従業員の男は現金を持ち去った男を店に招き入れていた。県警は、ほかにも事件に関わった人物がいるとみて捜査している。
逮捕容疑は、強盗の疑いで同署に既に逮捕されている専門学校生の男(19)=桑折町=とアルバイト従業員の男(21)=宮城県多賀城市=と共謀し、強盗を装ってパチンコ店から現金を盗もうと企て、12日午前1時50分ごろ、店に侵入し、現金約2800万円を盗んだ疑い。県警は従業員の男の認否を明らかにしていない。
県警捜査1課によると、従業員の男は被害者を装い脅されたふりをして、強盗犯役の専門学校生を店に招き入れた。帰宅途中に専門学校生と接触して店に戻り、裏口の鍵を開け、2人で事務所に入った。その後、従業員の男は金庫を開け、専門学校生が準備したバッグに現金を入れた。アルバイト従業員は運転手役だった。
従業員の男は当初、閉店後に事務所から帰宅する際に店外で拳銃のようなものを突き付けられ、金品の要求を受けたと説明。防犯カメラには従業員の男が専門学校生から拳銃のようなものを突き付けられた様子が写っていた。拳銃は玩具とみられる。
従業員の男は同店で一定期間働いており、事件のために送り込まれた可能性は低いという。強盗の疑いで逮捕した2人を調べる中で供述などから従業員の男が浮上した。県警は従業員の男が事件に関わった経緯や動機を調べている。
3人、事件機に接点か
県警は、逮捕した3人のほかにも指示役の存在を把握しており、交流サイト(SNS)などを通じてメンバーを集めた「匿名・流動型犯罪グループ」(通称・トクリュウ)による事件の可能性が高いとみて、実態解明を進めている。
事件は3人が被害者役、強盗犯役、運転手役と役割を分担し、組織的に実行された。捜査関係者によると、3人はいずれも知り合いではなく、指示役が間を取り持ったとみている。専門学校生の男とアルバイト従業員の2人は現金を手にした後、関東方面に向かったとされる。事件当日に東京都内の駅で何者かに現金が渡ったとされることから、現金の回収役もいるとみられる。
闇バイトで事件の実行役を募った可能性もある。県警は3人のスマートフォンを押収し、やり取りなどを調べている。
「問題ある社員ではない」
従業員の逮捕を受け、パチンコ店の運営会社の担当者は「問題のある社員だとは聞いていなかった。率直に驚いている」と話した。
従業員の男の近くに住む人たちも驚きを隠せない様子だった。最近は従業員の姿を見かけなかったという近所の女性は「やんちゃな子ではなかった。早朝に刑事らしき人たちが家に入っていったので『何かあったのか』とは思ったが…」と表情を曇らせた。
従業員の小中学校時代を知る同年代の男性は「少年時代は活発で、普通の子の印象。一緒に遊んだこともあるが、中学卒業後は全く会っていない。このような事件に関わるようなタイプではないと思っていたので驚いた」と語った。