厳しい暑さでトマトや牛乳の出荷量が減少するなど、福島県内の農畜産物に影響が出ている。気象庁の予報では9月に入っても高温が続く見込みで、農業関係者が警戒を強めている。
増える対策費用
「野菜作りに適した環境ではなくなっている」。田村市でミニトマトを育てるグリーン・フォー・テーブルの過足幸恵社長(40)は猛暑の影響を受ける農産物の生育を心配する。
一房に10個程度の実を連ねるミニトマト。しかし、ハウス内には実が付かないまま花が枯れる「花落ち」の房が目に付く。猛暑で受粉を助けるミツバチの活動量が減ったことで、実ができなかったためだ。過足社長は「秋に収穫できる量は少なくなる」と話す。
今年から一部のハウスの屋根に遮熱材を塗布し、ハウス内の温度を下げる取り組みを試験的に始めた。設備投資の費用が増える一方、収穫量は減る現状に過足社長は「できる限りの対策をしなければならないけれど、対策するにも限界がある」と頭を悩ませている。
猛暑と少雨による水不足の影響はほかの農作物にも出ており、JA福島さくらたむら統括センター営農課によると7月末の集荷量は昨年同期と比べ、ピーマンが2割減、インゲンは4割減になっており、尻腐れや日焼けの症状も出ている。
気象庁の秋(9~11月)の3カ月予報では、平均気温は全国的に平年より高い見込みで、暑さが和らぐのには時間がかかるとしており、引き続き影響が危惧される。
「対策しているが、年々暑さ増している」
県酪農業協同組合の加盟酪農家による7月の出荷乳量は約3050トンと、同月出荷量で過去最低となった。気温25度を超えると乳牛の生育に影響を与え夏場は出荷乳量に加え、乳牛の人工授精の受胎率も大幅に低下するという。
牛舎2棟に約40頭の乳牛を飼育する本宮市の酪農家渡辺正衛さん(66)は、大小異なる送風機計約20台で暑熱対策を講じている。牛舎は日陰に位置しているが、猛暑で出荷乳量は7、8の両月で例年よりも減少した。渡辺さんは「工夫して対策しているが、年々暑さが増している」と危機感を募らせている。