◆「未来に原発事故問いたい」 渡辺謙さんと佐藤浩市さん
東京電力福島第1原発事故直後、現場で懸命に対応した作業員を描く映画「Fukushima 50(フクシマフィフティ)」(若松節朗監督)の撮影が終わり、主演した俳優佐藤浩市さんと渡辺謙さんが17日、都内で記者会見した。
佐藤さんと渡辺さんは「原発事故を忘れず、未来にとって何が必要かを問いたい」と語り、原発事故との闘いが続く本県に熱い思いを寄せた。映画は来年公開予定。
原作は、ノンフィクション作家門田隆将さんの作品「死の淵を見た男 吉田昌郎と福島第一原発」(角川文庫)。佐藤さんは1、2号機の当直長として現場を指揮した地元出身の伊崎利夫役、渡辺さんは事故当時に第1原発の責任者だった故吉田所長役を演じた。
原発事故から9年を経ての公開に向け、佐藤さんは福島民友新聞の質問に「衝撃的な印象の中で映像を見ることができない人も多く、当時の記憶がない子どもたちもいる。(原発が)是か非かではなく、若い世代に何かを感じ取ってほしい」と作品に込めたメッセージを述べた。
本県など被災地の訪問を続けてきた渡辺さんは「単なる反原発や、原発がいいか悪いかを訴える映画ではない。未来の社会にとって(原発事故を)論理的に検証するための材料になってほしい」と意義を訴えた。
作品では、原発事故の最前線で何が起こり、死を覚悟して残った作業員がどのように立ち向かったか、その人間ドラマに迫る。表題は、海外メディアが現場に残った約50人を「Fukushima 50」と呼んでたたえたことに由来する。
撮影は昨年11月から今年4月にかけて行われ、双葉郡も撮影地になった。中央制御室や免震重要棟内の緊急対策室、破壊された建屋など大型のセットを長野県に組み、忠実に再現した。
作中の登場人物は全てフィクションだが、吉田所長のみ遺族の了承を得て実名で登場する。
◆映画製作委に福島民友新聞社参加
2020「Fukushima 50」製作委員会には福島民友新聞社が参加している。原作者の門田さんは、東日本大震災と原発事故を巡る福島民友新聞社の苦闘をつづったノンフィクション作品「記者たちは海に向かった」を執筆した。