1人暮らしの高齢者が経済的に自立できる環境の整備と、行政や地域全体で支える仕組みの強化の両輪で進めることが大切だ。
厚生労働省の国立社会保障・人口問題研究所の推計によると、日本の2050年の世帯数は約5200万世帯で、4割強が1人暮らしとなる。このうち65歳以上の1人暮らし世帯は、約1084万世帯で全世帯の5分の1強を占めることになる。
人口規模が大きく、未婚率の高い団塊ジュニア世代が高齢期に入ることが、1人暮らしの高齢者世帯が増えることの要因の一つとなっている。この世代が既に50代に入っていることを踏まえれば、1人暮らし世帯の増加の流れを変えるのは難しい。夫婦2人の世帯についても、どちらかが死亡し、そのまま同じ住居に住み続ければ1人暮らしとなる。未婚か既婚かだけの問題ではない。
50年を見据えて、1人暮らしの高齢者の生活を守るための対策に今から取り組む必要がある。
高齢者が十分な収入を確保できるようにすることは特に重要だ。現在は民間、公務員とも60歳定年で、その後は再雇用で収入が大幅に減るという形が一般的だ。
高齢者の割合が増えて、後進の世代が先行する世代を支える年金制度の財源は逼迫(ひっぱく)している。後進世代の負担を軽減するためにも、60歳を超えてもそれ以前と遜色ない収入を得られるようにすることが不可欠だ。
団塊ジュニア世代はバブル景気崩壊後に就職の時期を迎え、望まずに非正規雇用となった人などが多く、十分な収入や老後の備えができていない層が厚い。この層が老後の生活に必要な費用を確保できるようにすることも急務だ。
団塊ジュニア世代が60歳を迎えるまで5年強しかない。この世代が老後の見通しを立てられるようにすることは喫緊の課題だろう。
1人暮らしで、身近に頼る先がない人も増える。高齢者は賃貸住宅に入居しにくい現状や、認知症の増加なども指摘されている。病気などで1人暮らしが難しくなった人や認知症の人を、行政や介護サービスなどを通じて把握し、地域内でほかの人との交流を確保するなど、見守りの仕組みの強化も進めることが求められる。
現在、1人暮らし世帯で誰にもみとられずに亡くなり、後日発見される人の8割を高齢者が占めている。身寄りのない人の遺留品や住居の処分などは、避けられない課題だ。国などは公的サービスの拡充や民間の活用を含めて、検討を進めていくべきだ。