経済再生頼みの姿勢が前面ににじみ出ている。不確定な期待に基づく指針は、骨太というにはあまりに脆弱だ。
政府が経済財政諮問会議を開き、経済財政運営の指針「骨太方針」案を公表した。
財政健全化を巡っては、借金に頼らずに財政運営をできているかを示す基礎的財政収支(プライマリーバランス)を2025年度に黒字化するとの目標を3年ぶりに明記した。ただ、その目標に続けて、目標達成のために「経済政策の選択肢がゆがめられてはならない」とも強調した。財政健全化を理由に、経済政策が制約を受けないようにするためとみられる。
目標よりもそれが十分に達成できない場合の言い訳が目立つようでは、財政健全化は期待できない。持続的な黒字化を実現させる方策自体も経済成長への期待を前提としており、楽観が過ぎる。成長が滞った際への言及が希薄なのは疑問だ。
新型コロナウイルス禍以降、政府は経済社会活動の維持などを掲げて、さまざまな新政策に予算を投じてきた。今注力すべきは新たな財政出動の地ならしではなく、こうした政策の効果の検証であり、費用対効果の十分ではない政策への歳出の削減だ。
世界経済には紛争や影響の見通せない米大統領選などの不安要素が多い。原案にもある通り、国の財政に対する市場の信頼を確保することが政府の急務だろう。経済動向任せではない財政再建の方策を示すことが必要となる。
国債と借入金などの国の借金は約1300兆円で過去最大となっている。原案ではその対応について、国の借金の大きさを国内総生産(GDP)との比較で見る指標を安定して引き下げることを目指すとするにとどまった。国の経済の規模が大きくなれば、これまでの借金の負担は相対的に小さくなるという理屈を述べているに過ぎず、方針と言えるものではない。
マイナス金利政策の解除で、今後は国債などの利払い負担がさらに大きくなる公算が大きい。政府には先送りすることなく、債務低減に向き合う責任がある。
原案策定を巡っては、政治資金パーティー裏金問題による自民党内の混乱に加え、岸田文雄首相の党総裁の任期終了が近いこともあり、新たな政策などに踏み込まずにまとめられたとの指摘がある。こうした指摘が当たらずとも遠からずで、党内事情によって国の重要指針がその場しのぎのものとなっているのであれば、政権を担う党として許されるものではない。