子どもの声を生かし、より良い暮らしの実現へと向かう羅針盤としていくことが大切だ。
県が、新たな子ども・子育て計画「県こどもまんなかプラン」の策定を進めている。国の政策指針「こども大綱」の自治体版に当たる。虐待防止や貧困対策、成長に応じた支援などを地域の実情に沿って推進するために、策定が自治体の努力義務となっている。
新計画の基本方針には、子ども自身が意見を表明する権利を持つ主体であることが盛り込まれる。日本が批准した国連の「子どもの権利条約」に掲げられた権利で、条約の理念を反映した国の大綱が昨年策定されたことを受け、自治体レベルで具体化する形だ。
虐待や不登校などが減らない要因の一つに、権利を守る取り組みの遅れがあると指摘されている。条約批准から30年が過ぎており、遅きに失した感は否めないものの、子どもの権利を尊重し、課題解決を図る上で大きな前進だ。
県は、意見を聞く取り組みとして本年度から毎年、小中学生と高校生を対象にアンケートを行う。幸せかどうか―という主観的な幸福度などを尋ね、新計画の指標の設定や施策が幸福度にどう影響しているかなどの分析に生かす。
子どもの意見により、大人の目線では気付かなかった課題や地域の特性などを洗い出す効果が期待される。県は、新たな施策の立案などにつなげることが重要だ。
県が意見を聞く機会として考えているのは、現段階でアンケートのみという。これで子どもが感じている課題や伝えたいことを詳しく把握できるかは疑問だ。
例えば全国的に対応件数が増えている虐待の場合、保護された子ども一人一人の意向を的確に捉えるのが難しくなっているとの指摘がある。子どもの安全を優先し、児童福祉司を増員したり、意思表示が苦手な子どもの支援を強化したりすることが急務だ。
子どもの声をくみ取ることで、虐待や不登校などで打つべき手だてが明確になる。県には、民間の児童養護施設やフリースクールと連携するなどして、対話の機会を充実させることが求められる。
国の調査で、国や自治体の制度などについて意見を「伝えたい」と答えた子どもや若者は約7割に上った。一方、伝えたいと思わない理由の最多は「伝えても反映されないと思うから」だった。
形式的な意見聴取では、子どもや若者の社会参加の意欲をそいでしまう。県は、意見が施策にどう反映されたのか、議論の過程や結果を示すことが重要となる。