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水泳授業「学校外で」 広がる民間委託、教員負担や修繕費抑制へ

07/09 09:30

学校外のプールで水泳の授業を受ける児童=8日、いわき市

 福島県内の公立小中学校で水泳の授業の民間委託が進んでいる。民間の水泳教室のノウハウを生かした児童生徒の泳力向上に加え、プールの水質管理といった教職員の負担軽減も期待されるためだ。設備面では耐用年数が30~40年ほどとされる学校プールの老朽化も課題になっており、少子化が進む中で修繕費用を抑えられないか、自治体の財政負担の面からも民間委託を模索する動きが出ている。

 いわき市の大教スイミングスクール小名浜校。約3キロ離れた磐崎小から児童らがスクールのバスに乗って訪れた。磐崎小が8日、報道陣に公開した水泳の授業では4年生約70人が泳力によって3クラスに分かれ、スクールのスタッフから指導を受けた。クロールと平泳ぎの練習に励んだ木村哉汰(かなた)さん(9)は「指導が分かりやすく、少しずつ泳げるようになってきた。平泳ぎで25メートルを泳げるようになりたい」と声を弾ませた。

 建設から40年以上が経過した同校のプールは傾斜が急な場所にあるなど大規模改修は現実的ではなく、市は2021年度に初めて民間に委託した。

 熱中症対策にも

 民間委託による授業は各事業者が運営する屋内プールで行われている。水温や気温、天候に左右されずに授業ができる上、熱中症のリスクも減らせる。泳ぎが苦手な児童生徒も専門的な指導を受け、泳力が身に付く事例も確認されている。

 夏場に毎日、必要な塩素濃度の確認や安全点検、清掃といった業務がなくなるため、教職員の多忙化改善にもつながっている。少子化が進む中、スクールのPRにもなるなど事業者側のメリットも大きいという。

 市内の小中学校のプールの約8割が築30年を超えており、市教委は修繕の費用対効果や、学校から各施設への距離などを考慮し「今後の民間委託のモデルケースにしたい」としている。

 町村での対応課題

 いわき市のほか、須賀川市や福島市なども民間委託を取り入れている。須賀川市は新たな市民プールの整備や学校プールの修繕による継続などを検討したが、民間委託へかじを切った。本年度は小中学校計25校のうち14校で民間委託し、残る学校も原則民間委託する方針だ。福島市は余目小を初のモデル校とした。

 会津若松市は小中学校計5校で老朽化などからプールの使用を中止し、試行的に民間や市の施設を利用したり、近隣校にバスで移動したりして、水泳の授業を行っている。

 一方、市部と比べて民間事業者や学校数が少ない町村部では選択肢が限られ、学校プールの修繕や公営プールの整備などで対応することになりそうだ。中通りのある町村の関係者は「(教職員や財政への)負担をどうするか考えつつ、教育の機会をしっかりと確保したい」と動向を注視している。

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