県が、中通りで市町村をまたぐ広域路線バスの再編・見直しに着手した。利用者が減少し、存続が危ぶまれる路線についてはこれまで、東日本大震災の被災地の特例措置による補助で存続しているが、来年度でこの措置が終了する。新たな補助を受けるには、県が国に対し、利用の少ない路線の再編や統廃合を盛り込んだ利用増進の計画を提出する必要がある。
県によると、対象地域で国の補助を受けている広域バス29路線(地域間幹線系統)のうち17路線が、国の補助要件である「1日の乗客15人以上」を満たしておらず、見直しの対象となる。
バス事業者はドライバー不足が深刻化しており、利用の少ない路線について事業者に運行を求め続けるのも現実的ではない。見直しにより利用者に痛みが伴うことは避けられない状況だ。
広域路線バスは、鉄道がカバーしきれない区域の高校生の通学に加え、運転免許を返納した高齢者のニーズの受け皿として期待される存在だ。国の補助を受ける条件を整えるだけでは対症療法の域にとどまってしまう。
持続可能な仕組みを構築し、住民の利便性確保と、公共交通機関がなくなるかもしれないとの不安を低減することが重要だ。
国は重複区間のある路線の統合、利用実態に応じた路線の分割のほか、需要の高い施設などに路線を延伸するなど利便性を向上させ、新たな需要を取り込むことなどを示している。
再編の対象となるのは、過疎地域を含む路線が多く、利用が伸びなければ、さらなる見直しを迫られる。それを避けるためにも補助の適用要件を満たした上で、安定的な利用が見込める路線にしていくことが重要となる。国が例に挙げる路線の延伸などによる新たな需要の創出も視野に入れることが不可欠だ。
再編の在り方については、地元市町村でなければ、詳しい状況の把握や、その後の需要を推測するのが難しい面がある。各市町村は運行が維持できるよう、実情に即した再編と需要喚起に向けたアイデアを積極的に打ち出すことが求められる。
再編による統廃合で路線がなくなる地域では、市町村による乗り合いバスや、一般ドライバーが自家用車で有償送迎するライドシェアなどが影響の低減策として活用されることが考えられる。人口減少の加速により、同様の対応が必要となる路線も出てくるだろう。今後に生かせる知見の蓄積にも期待したい。