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【7月12日付社説】ふるさと納税/過度な競争招かぬ仕組みに

07/12 08:20

 寄付者の思いと浄財を無駄にすることなく、地域振興につながる制度を構築することが重要だ。

 総務省がふるさと納税制度のルールを見直す。自治体が仲介サイトを通じて寄付を募る際、寄付した人に特典ポイントを付与する業者の利用を禁止する。

 サイトを運営する仲介業者に支払う自治体の経費が膨らんでいることが禁止の理由だ。大手の仲介業者は自社サイトの利用者を増やすため、寄付金額に応じてポイントを付与し、還元率などを競っている。ポイントはサイトでの買い物などに使えるため、「陰の返礼品」とも呼ばれている。

 利用者は全国の自治体の返礼品を簡単に検索でき、自治体も広くアピールできる仲介サイトの活用は双方に利点がある。しかし業者への手数料と送料が寄付額の1~2割を占めるとされる。業者への手数料の一部がポイントの原資になっているとの指摘もある。

 寄付金が自治体の収入となり、地域の振興などに役立てることが、2008年に導入された、ふるさと納税の趣旨だ。手数料がポイントの原資になっているのであれば適切ではない。自治体の経費負担が減り、寄付金がより有効に使えるように改めるのは当然だ。

 総務省によると、22年度の寄付総額は過去最高の9654億円に上った。県内59市町村が23年度に受けた寄付金の総額は89億円と、4年連続で過去最高を更新した。

 一方、返礼品を巡る自治体間の競争の激化が問題視されてきた。高級な家電や家具などを返礼品に扱う自治体が増えたことを受け、「寄付額の30%以下の地場産品」の基準が設けられるなど、これまでもルールは見直されてきた。

 しかし最近は返礼品を提供する業者による肉、魚の産地の偽装などの不正が発覚した。返礼品の調達費を実際より安く見せるなど、ルールに違反した自治体もあった。このため総務省は自治体に産地表示の定期的な確認を義務付けるほか、返礼品の地場産品についてもより厳格な基準を設ける。

 たびたびルールが見直されても順守されなければ、ふるさと納税制度の存続が危ぶまれる。各自治体や業者はルールに従い、適正に寄付を募ることが求められる。

 ブランド力の高い農産物や魚介類のある一部の自治体に寄付が偏っているとはいえ、自治体のPRや地場産品の振興が図られた面がある。ただ寄付金の活用策については不透明な部分も多いとの声が根強い。各自治体は寄付金をどう活用し、地域のために役立てているのかも積極的に発信すべきだ。

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