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【7月14日付社説】エフレイとオイスト/研究と産業の両輪で結果を

07/14 08:30

 浪江町に整備中の福島国際研究教育機構(エフレイ)のモデルの一つとされるのが、沖縄県の沖縄科学技術大学院大(オイスト)だ。2012年開学のオイストの現状と課題を踏まえ、エフレイをより地域密着型の組織として磨き上げていくことが求められる。

 オイストは、科学技術の教育と研究で沖縄発展に貢献する目的で設立された。各国から教授陣を招き、科学誌の研究機関ランキングで世界9位となるまで成長した。その半面、ベンチャー企業の育成施設の完成が本年度末であるように、成果の産業移転などの取り組みは遅れ、地域に波及効果をもたらすことが課題となっている。

 エフレイは、施設がまだ建設されていないが、地域の課題解決につながる研究を外部機関に委託している。55の委託テーマのうち、農業分野など数件で近く研究成果がまとまる見通しだ。エフレイは地元企業に実用化試験などへ参画を促す取り組みを強化し、世界水準の研究開発と産業化の両輪で結果を出していくことが重要だ。

 オイストの研究者らは、恩納村の山間部の敷地内にある専用の住宅群で生活する。職住一体で、事務局から生活面に至る支援を受けることができる環境は人材を招く上での利点だ。しかし、外部の関係者が「研究は評価するが、親しみはない」と語るように、周囲と隔絶した空間であることが地域連携を妨げる要因の一つとされる。

 JR浪江駅周辺の平地に立地するエフレイは、研究者の住宅を一カ所に集約せず、車で約30分の範囲の地域内で生活してもらう考えだ。その際には、研究者が住みたいと思うような住宅の確保が鍵になる。エフレイには、周辺自治体と協議に入り、地域に開かれ、広域的な連携を醸成するような住環境整備の実現を求めたい。

 沖縄ではオイストで働く外国人の子どもの学びの場として、充実した英語教育を行う新たなインターナショナルスクールが設立された。だが、入学者は少数で、多くは地元の恩納小に通い日本語教育を受けている。オイストなどに聞くと、子育て世代スタッフの給与水準とスクール授業料が折り合わないことなどが影響したという。

 エフレイで働く外国人の移住を見込み、南相馬市で国際的な教育プログラム「国際バカロレア」を導入するなどの動きがある。沖縄の事例からは多様な受け皿の準備が不可欠だが、市町村をまたいだ議論は進んでいない。高校教育の充実も踏まえれば、県がリーダーシップを発揮して教育面の受け入れ態勢を構築する必要がある。

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